※※第225話:Make Love(&Eagle wings).132
「薔っ、機嫌を直してくださいよぉっ、」
ナナは困ったように、ソファに並んで座っている彼をなだめていた。
「………………。」
黙っている薔はご機嫌ななめというよりむしろ、ふてくされているように思える。
わんこたちはほのぼのと、寄り添ってリビングにてうとうとしている。
「すみませんでした、わたしがぜんぶ悪うございました……」
内心では彼の態度を可愛いと思いながらも、ナナはきちんと謝った。
「薔とお話をしていたのに、ついついテレビに映ったザザえもんを見てしまい、ほんとうに……すみませんでした……」
と。
…――――だから拗ねているのか!
「……やだ。」
「やだーっ!?」
薔の機嫌はなかなか回復しないようで、ナナは困惑すべき場面にも拘わらずたいそうときめいている。
「あれか?シールを集めりゃあのでこぼこの浮き輪がもれなくもらえるとか言うやつ、やっぱおまえは欲しいのか?」
おまけに彼女が反応したのはザザえもんグッズがもれなくもらえるという何かしらのキャンペーンのCMのようで、機嫌を損ねながらも薔はちゃんとその点については確かめてきてくれた。
この物語は只今6月の中旬ですので、浮き輪にしても何ら違和感はございませんかと。
「い、いえ、わたしは泳げませんので……そんなことは決して……」
泳げないのであればなおのこと浮き輪は必需品でもあると思われるのだが、ナナは控えめにほんとうは欲しいのだけど欲しくない風を装った。
「明日からパン食増やすか…」
「しょっ、薔ーっ!」
それでも彼はシールを集めて(パンに付いてくる模様)、もれなくもらってくれるようです。
感動したナナは、声を張り上げた。
「………………。」
彼女の喜びように、薔はまたまたふてくされ黙り込んだ。
(あわわわわわわ!)
感動中のナナは、自分のことをちゃんとわかってくれながらも拗ねている彼の姿に、そら萌えながらふとザザえもんのぬいぐるみへと駆け寄った。
「いっそ、殴ってください!」
「あ?」
ザザえもんのぬいぐるみを差し出したナナは、殴られても構わないことを(ザザえもんが)証明して見せる。
“おいらは女の子だよ……”
ザザえもんの嘆きが、今にも聞こえてきそうだ。
おそらくピノ太くんは、面白がっていることだろう。
「薔が取ってくださった大切なものですがっ、薔のご機嫌が直るのでしたらっ……」
ウルルと瞳を潤ませたナナは、全身全霊で謝罪の気持ちのみで特に悪気はなくザザえもんを犠牲にさせようとしている。
一所懸命な彼女の様子に、薔はきっぱりと返した。
「いや、いっそ俺を殴れ。」
[ 420/535 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る