※※第224話:Make Love(&Internal).131








 「真依さんさ、明日お休みっつうことはこのまま俺ん家泊まってけばいいのに。」
 スタジオに訪れた彼女が差し入れてくれたミネラルウォーターを飲みながら、屡薇は素直にお誘いしてみた。

 「まあ、特に観たい番組も今夜はないし、それでもいいけどさ……」
 ドキドキを隠すためにひどく不本意そうに、真依は返した。
 ほんとうのことを言うと、“それがいい”のだけど。

 「観てぇ番組あったとしても、さすがに俺ん家テレビあるよ?」
 「うっ、うるさいな!もうっ!」
 屡薇は目をぱちくりさせて何故観たい番組について引っ張りだしてきたのかよくわからない様子だったが、真っ赤になって憤慨する真依はそれしか渋々である理由が思いつかなかっただけだった。


 (ふぅ……お水美味しい、真依ちゃんはきっといい嫁さんになるね……)
 感心する他のメンバーたちにもばっちりミネラルウォーターの差し入れはあり、皆一息つきながらたまにおさらいのためのリズムをつい取っちゃったりしていた。


 と、寛ぎの時間だったそこへ、

 「屡薇さんて方は、どちらのおかたになるのかしら?」

 夜なのにサングラスをかけた女性が、ただならぬオーラを纏い訪れた。





 (あれって、例の……)
 ごくりと息を呑んだほとんど皆が、雰囲気からしてそれが誰なのかわかった。
 初日との熱愛報道を勝手にでっち上げさせた、大女優さんとやらだったのである。

 「俺だけど、あんた誰?」
 しかしながらサングラスには色々と思い入れがある屡薇は、サングラスに目がいきすぎてそれが例の大女優なのだとはまったく気づいていなかった。
 気づいていないことに、周りは驚きを隠せないでいる。


 「あなたが、屡薇さんね……」
 マネージャーらしき人物が入り口でオロオロしているなか、大女優さんとやらはずかずかと屡薇へ向かって歩み寄ると、

 「聞いたわよ、初日さんから、」

 サングラスを外し、女優らしい迫真のヒステリックさで凄んで見せた。

 「あなた、初日さんの彼氏なんでしょう!?」










 ブ――――――ッ!

 とメンバーたちは、ミネラルウォーターを豪快に吹きかけた。

 「いや、彼氏じゃねぇし。」
 ようやく例の大女優だとわかった屡薇は、話の展開についていけず目が点になる。

 「とぼけないで!初日さんはガチホモだと、本人から聞いたの!そしてあなたとお付き合いをしているとも、この耳でちゃんと聞いたわ!」
 もはや職業関係なく純粋に恋する乙女になっているのか、大女優さんは周りの目を気にせず声を張り上げた。
 何でそこで俺を彼氏にする必要があったんだ……と、美形キャラにも拘わらず屡薇の目はさらに点となった。

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