※※第217話:Make Love(&Seek).126
帰ってからお散歩も終え、夕食の支度に取りかかる前のこと。
「おまえ何か怒ってんのか?」
ソファに並んで座っていると突然薔に問いかけられ、ナナはギクリとした。
わんこたちもリビングで寄り添い、お散歩後の寛ぎタイムとなっている。
「い、いえ、全然、怒ってなんか……いないです……」
小さい声で告げた通りに、怒っているわけでは決してなかった。
やっぱりモテる彼氏にヤキモチを妬いてしまったのは事実だが、でも彼の言葉ではたくさんの嬉しさや幸せをもらってしまいニヤニヤしそうになるのを抑えていただけなのだ。
劇の稽古中なども努めて作っていた真剣な表情は、やはりちょっと怒っているように見えるほどの仕上がりだったようだ。
ナナはもじもじと、視線を逸らしながら返す。
「ふーん…」
薔はそっと彼女の髪を撫でて肩から滑り落とすと、
「ほんとに?」
甘えるみたいに肩へと頭を乗せて、上目遣いに確かめてきた。
(ぎゃお――――――――――――っ!)
おーっ、ぉーっ…(※激しくときめいたエコー)
ナナは仰け反りたかったが、仰け反ると彼に差し支えるため一所懸命に堪えた。
「ほんとうに怒ってませんーっ!ただちょっとヤキモチは妬きましたけど、薔がとっても嬉しいことをおっしゃってくださったので笑っちゃいそうになるのを我慢してたんですーっ!」
甘えられたナナは鼓動は速めつつ体勢は不動の精神でばか正直に応え、
「なら素直にそう言えよ、可愛いな。」
未だ甘えたモードなのか、薔は肩に頭を乗せたままくすくすと笑った。
真っ赤のナナは心地よくいい匂いに、鼻息まで荒くしてしまいそうな勢いである。
「あっ、あの、ほんとうに、ありがとうございます!」
彼の頭を思いっきりなでなでしたい衝動に駆られながら、ナナは衝動については勢い余れなかったが、問いかけについては少しだけ勢い余れた。
「薔はわたしの変な顔とかも、見たいと思うんですか!?」
……そんな弄り甲斐のある質問しちゃったら……
「何だよ、見せてくれんのか?今すぐやってみろよ。」
「えええええ!?」
弄れそうな問いかけがきた薔は肩からは放れてしまったが、彼女を見つめながら巧く無茶振りをしてきた。
ナナは自分から問いかけておいて、変な顔というのがいまいちよくわからずに困惑する。
「えっと、どんな顔をすれば……よろしいんですかね?」
悩みながらも結局は、彼に教えてもらおうと試みる。
「そうだな、目ぇ閉じて口を窄めてみたらどうだ?」
「ほ、ほおお……?」
さらりとアドバイスがきたナナは、それはほんとうに変な顔なのかという疑問を持つ前に言われた通りにやってみた。
次の瞬間に、
チュッ――――…
キスをされちゃいました。
意地悪く導かれて、立派にキス待ち顔をしておりましたので。
やわらかく触れあったくちびるは、須臾でも確かなあたたかみを帯びた。
ドキッとするとすぐにくちびるは放されていって、唖然としながらナナが目を開けると、
「引っ掛かったな?」
悪戯っぽく笑った薔は彼女のあたまを撫でて促した。
「そろそろ飯の準備するか、」
「あ…っ、はい……」
ナナは大人しく、彼の言葉に従った。
そう言えば今日はこけしちゃんにもらったチョコレートがあったとふと思い出したナナさんは、もっと甘くキスをしてほしい気持ちをひとまずチョコで紛らしたいくらいだった。
[ 301/535 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る