※※第217話:Make Love(&Seek).126







 ここぞとばかりに放送部の部長くんは、マイクのスイッチを入れた。
 高校生活で培ってきたマイクタイミングを、最大限に役立てることができていた。


 「1年6組、橋本(はしもと) 萌です……この度は、薔さまに憧れすぎている余りに三咲先輩に幼稚な嫌がらせをしてしまい……申し訳ございませんでした……」
 頭を下げている萌はマイクのスイッチが入れられたことにまったく気づいていない。

 「い、いや……あの……はあ……」
 嫌がらせについてはさほど気にしていないナナは、何と返すべきか迷った結果かなりの生返事となった。













 「えっ!?なにこれ!?ちょっと!橋本 萌ってやつ、何余計なことしてくれてんのよ!」
 「この学校でのタブーを知らないのか!?」
 「あああ悪夢が蘇りそう…!」
 いきなり始まった謝罪放送に、校内はざわついた。
 親衛隊の皆さんは率先して、女子生徒の名前とクラスをしかと覚えた。





 「蜘蛛はかなり怯えてたからな、俺の大事なこいつに何かあった場合はどうなんのか、お前にしっかり教えてやる。」
 確かに怯えはしたが結果的には立派なイチャイチャの時間を醸し出したのだけど、薔は厳格な態度で萌へと言い聞かせた。


 「ひぇぇぇぇぇえええ!嫌だ――――――――――っ!」
 その言葉を聞きたくない女子たち(たまに男子)の悲鳴が学校中に響き渡り、副部長さんもすかさず悲鳴を上げたために見事にその部分についてはかき消された。
 部長くんは思い切りビクッ!となっていた。


 ※この悪夢についてはかなり初期の第14話参照です。











 萌はドファンシーな塊を落としそうになるほどの青ざめようで、先ほどよりもガクガクブルブルと震え始めた。
 副部長さんの悲鳴も、上手い具合にこっちをかき消すことはなかったようだ。

 「そっ……そんなっ、恐ろしい……ことがっ……ひええええ!」
 ホラーチックにも勝るほどの戦慄が、走る。
 萌は畏れ多くて眺めるのにも勇気が必要なレベルだったためか、親衛隊の皆さんからのご鞭撻もなくここまできてしまったようだ。

 「薔さまは……やっぱりっ、絶倫がいいですっ…!」
 そんな萌の妄想上でも薔は絶倫のようで(普段どんな妄想をしているのやら……)、とうとう女の子は恐怖に泣きだした。

 そもそもヒーローが絶倫じゃなかったら、萌ちゃんが登場するだいぶ前にこの物語は終了していたと思われるよ。

 (えっと…、ぜつりんて……何ていう意味だったっけ?)
 首を傾げるナナはまたしても、辞書が必要になっており、

 「ほんとにっ、薔さまほど完璧なおかたはいらっしゃらないです!」

 萌は泣き叫んだ。

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