※※第217話:Make Love(&Seek).126







 「す、すみません……あたし、薔さまに憧れすぎてて、三咲先輩にこんな幼稚な嫌がらせをしてしまって、本当に申し訳ありません……」
 ドファンシーな塊をありがたそうに手にしている萌は深々と頭を下げ、ナナへの敬意が芽生えたこともあり正直に謝罪できていた。
 ここで、おおかた気づいてはいたが事実を知ったナナの雰囲気は険しくなった。
 無論、彼女の雰囲気を険しくさせている要因は、じつは嫌がらせだったという点ではなく彼氏に憧れていたという点である。


 「あ?」
 自分の目線それすなわち欲目で推理をした名探偵さまの推理はまあ、彼女可愛さによるものでしたが、嫌がらせとなればそれはそれで薔の雰囲気もさらに険しくなった。
 彼の予定では、今時こんなくだらないアプローチをしてくる女の子の実態や名前や何かを校内放送で配信して、二度とできないよう辱しめることとあかりなども含めナナを狙う者どもへの戒めとしたかったのだけど、こうなると予定が変わってくる。
 放送部のふたりは、放送部員のプライドをかけて予定が変更されたであろうことを悟り、校内へ配信するやりとりが巡ってくるチャンスを固唾を呑んで待っていた。



 「全部あたしがいけないのでございます!罰でも極刑でも磔殺でも、なんでも受けさせていただきます!」
 萌は頭を下げたまま、ちゃっかり己の願望に入る。
 想像するだけで悦びに震えだした女の子の姿はまたしてもホラーチックだったのだけど、磔殺ってまた古風な……と放送部のふたりは呆れ気味で、たくさつ?とキョトンのナナには辞書が必要になっていた。

 「何もしねぇよ、お前みてぇな奴には。血祭りの予定だったが、あからさまに喜んでる奴を血祭りに上げても何も面白くねぇからな。」
 あっさりと返した薔も呆れている様子で、萌にとっては一番堪えがたい罰を与えてきた。

 「とりあえず、永久放置が妥当ってとこか、」








 痛めつけられたがっていた萌は放置プレイについてをまず思い浮かべたのだが、

 「勘違いすんなよ?放置プレイはナナにしかしねぇからな?お前の場合はただの放置だ、存在自体が俺の中では認められねぇことになる。」

 呆れつつも厳しく、薔はつづけた。

 「要するに一生、完全無視だな。」










 (えええぇぇぇぇぇぇえええ!?)
 何だかんだで構ってほしい人にとっては、一生無視をされ続けるという最も恐ろしいやつが来て、萌はガクガクブルブルと震え始めた。
 未来の話をすると、社会人になってから街で薔を見かけたとしても、萌はそこにはいない人間となってしまう。


 「それが嫌なら今すぐナナに謝れ。名前もちゃんと明かして真摯に謝罪しろよ?」
 己の願望へと持っていかせるためではなく、純粋に謝罪をさせるべく薔は萌へと命じた。
 話しかけてもらえているこの時間が幸せすぎた萌は、一生完全無視は殺されるより遥かに辛いためにナナへと向かって慎み深く頭を下げた。
 ナナは薔が説教をしているとは言え、女の子に声を掛けているのにはかなりイライラしてしまっていた。

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