※※第216話:Make Love(&Sex aid).20







 蜘蛛の後にはだいたい蛇あたりが来るだろうと予想をしていた薔は、授業中に蛇のオモチャを握りしめながら廊下を走っていった女子生徒の姿にちゃんと気づいていた。
 名探偵さまの欲目による推理によると、女の子は、“ナナのあまりの可愛さに自分の色に染めたがっている奴”ということになります。


 「あいつか…」
 そら険しい雰囲気で呟いた薔は、走っていったのが男子生徒なら授業中でもお構いなしにその場を惨状にしていた勢いである。

 (何事ですか……)
 ただならぬオーラを感じ取った周りは、授業中なのだけどドキドキ震撼していた。






 (薔さまの教室の前、通ってきちゃったあああああ…!)
 慌てていたとは言え2-1の教室の前の廊下を通ってきてしまったと気づいた女の子は、チラ見くらいはしてくれば良かったと後悔の念に駆られながら蛇のオモチャを手に廊下へと失意体前屈(orz←これ)をしたのだった。
















 ――――――――…

 ぼーっ…

 としながら授業を受けているナナは、たいていはまあ上の空なのだけど、最近妙にふと気にしてしまうことがあった。

 (うう〜ん……全然思い出せないなぁ……)
 気になることというのはファンシーや微グロテスクについてではなく、先日見た夢の内容についてだった。
 泣きながら目を覚ました朝、心配そうに彼女を見ていた薔と、掴みようのない切ない既視感が一瞬重なった気がした。
 彼を愛おしく思いすぎて息が止まりそうになったあの感覚があまりにも確かで、ナナはどんな夢だったのかがこれっぽっちも思い出せないその内容についてを不意に気にかけてしまうことがあった。

 (思い出せないなら、大した夢じゃなかったんだよね……)
 と、何度か自分に言い聞かせた。
 あのとき、ただ単に自分を心配してくれる薔の姿に安堵しただけなのだと。

 もう忘れようと思っているうちは、忘れることができていない証拠だ。
 ナナは彼と一緒にいるときはほとんど気にするようなことはなかったのだけど、授業中などには思い出してしまうことが多かった。
 こんなことならこけしちゃんのノートを持ってきて読み耽っていれば良かったと思っているナナですが、そもそも授業中には授業に集中しましょう。

 本日の空は少しどんよりしていた、天気予報では晴れのはずだったが。
 当たらない天気予報……それも少しだけ、ナナの心には引っ掛かった。




 気づかないところでじわじわと、黒の未来へ導かれようとしていた。
 歯車はとっくに、狂い始めている。

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