※※第215話:Make Love(&Sex aid).19
「ひぎゃあああああああ…!」
突然、悲鳴を上げたナナはがさごそとやっていた自分の鞄を慌てて放ると、隣にいた彼氏へとぎゅむっと抱きついた。
鞄の中にちゃんとこけしちゃんのノートが入っているのかを確認していたところ、とんでもなくグロテスクなものを発見してしまったのだ。
帰宅してわんこたちのお散歩も済ませて、これから夕食の準備をしようとしていた月曜日の夜のお話です。
「どうした?」
彼女にいきなり抱きつかれておまけに胸とか当たってくるためムラッときちゃった薔ではあるが、決して襲うようなことはせずにあたまをなでなでしながらやさしく問いかけた。
「くくくくっ、クモっ…!クモがいますっ…!怖いぃい…!」
「……蜘蛛?」
必死になってすり寄るナナはものすごくここはいい匂いだと思いながら鞄を指差し、怪訝そうな表情となった薔は彼女につよく抱きつかれたまま鞄を引き寄せた。
くれぐれも、例の禁断のノートより先に蜘蛛とやらを発見してほしいところである。
この状況だと、否そうじゃなくてもわりとか、とっちがヴァンパイアなのかがわからなくなりそうだな。
(うはぁ――――…いい匂いだよ……)
ナナは早くも怯えることより、甘い匂いや体温を堪能することに勤しみ始めていた。
間一髪と言うべきか、薔はノートより早く鞄の中では異様な存在を発見したようで、
「おまえこれ、オモチャだぞ?」
百均で購入したっぽい奇抜な色合いの蜘蛛を摘まみ上げると、彼女をなだめるようにあたまをぽんぽんしてそう言った。
「えええっ!?本物かと思いました、びっくりしましたよ!」
蜘蛛の出来栄え云々より彼の頼もしさに感心して顔を上げたナナは、改めて現状に気づき真っ赤っかとなった。
「って、何をやってらっしゃるんですかーっ!?」
「おまえがな。」
驚きながらも離れようとはしない。
得意技のどさくさ紛れ、継続中です。
「よく見りゃ偽物だってわかるだろ?」
薔はしっかりと確かめさせるように、手にしたオモチャの蜘蛛を彼女の目の前へと持っていき、
「ひぎゃあ!やめてくださいよーっ!」
思い切り目を瞑ったナナは、怯えるように躰を反らした。
絶大な安心感を得られているために、彼にはしかと抱きついたまんまだった。
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