※※第211話:Make Love(&Sex aid).18
「えっと……困った。こけしちゃんを、助けに行かなきゃいけないのに……」
ナナはおずおずと玄関のドアノブへ手をかけてから、開けてもいいものかどうか迷った。
ドアの外からは必死になって何かを訴えている様子の羚亜の声だけは、聞こえてくる。
「うう〜ん……気になる……」
勇気を出してドアスコープを覗いてみようかと思ってもいるナナさんは、何となく躊躇われたためにドアへと耳を当ててひとまず盗み聞きを試みた。
すると、彼女の足元にお座りをしている花子が明らかに、
トロン……
とした目つきになったのである。
豆は心意気で大好きな花子に便乗し、トロンとした目つきになる。
「花子ちゃんと豆ちゃん、お散歩の前なのに、眠いの?」
目をぱちくりさせたナナは、盗み聞きに徹することもなくわんこたちの相手を始めた。
花子はいつでもご主人さまの味方で、豆はいつでも花子の味方だった。
「このセーラー服は、要さんが、こけしさんのためとかで俺に着せたやつだから、気にしないで……」
俯き加減に今度は赤いリボンをキュッと掴み、羚亜はやや震える声で言った。
「やっぱあの眼鏡は阿呆だな。」
「その阿呆の要さんが今、大変なことになってるんだよ……」
「ふーん。」
薔の、醐留権を阿呆呼ばわり再びで、感化されたのか羚亜も特に何も指摘することなく阿呆呼ばわりで返した。
ふたりに阿呆呼ばわりされている醐留権先生は、大変な最中であろうとくしゃみでもしちゃっているかもしれない。
とここで、阿呆呼ばわりはいったん置いておき、
「要さんのおじいちゃんが、要さんとこけしさんを何がなんでも無理矢理結婚させようとしてて……ふたりを軟禁みたいにしているんだよ……。助けようとした俺は追い出されちゃって、だからここに来れたんだけど……」
羚亜は薔のシャツを掴むような仕草をしてから(すんなり掴める雰囲気ではなかった)、懇願したのだった。
「お願いだから、薔くんと三咲さんがふたりを助けてあげてよ!このくらいラブラブでなくちゃまだ結婚はできないんだってことを、見せつけてあげて!」
「そういうことなら仕方ねぇな、散歩がてら助けてきてやる。」
「ありがとう、薔くん!」
まんざらでもなかった薔はわりとあっさり彼女と一緒に、あくまでもわんこたちのお散歩がてら助けに行ってくれる模様だ。
醐留権とこけしちゃんもラブラブではあるが羚亜の説得はさすがであった。
「あとは俺たちに任せて、お前はもう彼女んとこ行っていいぞ?」
「ありがとう、薔くん優しい!」
ナナに見せるわけにはいかないため追い払われた羚亜は感動しながら、愛羅のもとへと向かった、セーラー服姿で。
自ら罠に嵌まりに行ったとしか言いようがない。
[ 201/535 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る