※※第206話:Make Love(&Public sex).3








 美術館でのデートのあと連れて来られたのは、いつぞやの大作戦のときに皆で打ち上げをした懐かしの高台にある公園だった。
 けっこう近場にあったようです。



 「あっ!ここは覚えてますよ!」
 ナナはとたんにはしゃぎだし、同時に、遊具で遊ぶ子供の姿も見当たらないことに期待が高まり、ドキドキし始める。

 「あん時はおまえが酔っちまって、大変だったよな?」
 「あの、それは本当にすみません……」
 悪戯っぽく笑って、彼女の手を引く薔は迷わず展望台へと向かって歩き出す。

 「謝んなよ、すげえ可愛かったから…」
 今度はちょっと妖しく笑った彼の髪を、風が撫でてそっと揺らした。


 視線に射抜かれてしまい、ナナは照れたように押し黙る。
 会話が途切れてもまったく気まずくはない、言葉にしなくとも、繋いだ手から熱や鼓動がちゃんと伝わりあっている。

 足音が静かに響く螺旋階段をゆっくり上った先に、ふたりでこっそりキスを交わした展望台があった。
 あの時、空には星が散在していたが、今はゆったりと雲が流れている。








 「あっ……景色、見ますか?」
 風の音のなかで、ナナはおもむろに口を開く。
 望遠鏡が一台空へと臨めるように設置されている丸い展望台には、覆うくらい大きな屋根はついていたが柱のあいだに壁は張られていない。
 日陰となったここを吹き抜ける風は幾分涼しく、火照りゆく躰には心地よかった。

 「そんなことより、」
 彼女の腕を引っ張って、遊具場から最も遠い柱へと寄りかからせると、

 「ここでキス以上のこと…したくねぇか?」

 問いかけてからすぐに薔は彼女のくちびるを奪ってしまった。
 考える余地として、堕ちてしまうほどに危険なくちづけが与えられたのか。

 ナナには最早、考えるまでもない、彼に誘われたことが全てだった。
 一度濃密にディープキスを交わした場所で、再びキスはディープとなる、拒めるはずがない。

 ぎゅっと、ナナは彼の制服を掴む。
 足元に無造作に置かれたふたりのバッグだが、つけられている花子のキーホルダーとザザえもんのキーホルダーはうまい具合に向きあって「こんにちは」をしていた。
 なんだかとても、照れくさそうに。


 ちゅっ…ちゅくっ…

 「……っん、ん…っ、」

 展望台にはやわらかな風が吹いている、おまけに甘やかな声は少し漏らしただけで響く気がする。
 ナナは彼に言い聞かせられなくとも、声を抑えようという意識を頭の片隅あたりで持ってはいた。
 キスをしながら互いのブレザーは脱ぎ捨てられる。


 彼女の髪をしなやかに、薔はゆびで梳くように撫でて、ほんの少しだけくちびるを離して見つめると、微笑んだ。

 「キスだけで随分とえっちな顔になっちまったな?」

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