※※第206話:Make Love(&Public sex).3








 テスト最終日まで、演劇部の活動はいったんお休みとなっている。
 夕月の写真展は24日の日曜日から開催されており、美術館は学校からもそう遠くはない場所にあった。

 放課後、制服姿のままラブラブデートでございます。
 もうすぐ6月で衣替えの時期ということもあり(この物語は只今5月下旬)、日差しは強くすでに汗ばむ陽気だ。




 お昼はナナのたっての希望で、例の薔が一日アルバイトをしたカフェに来ていた。
 デートなら心置きなく彼女とふたりっきり世界になれることもあり、ほとんど野獣しか働いていないお店でも一番の美しき野獣こと薔は渋々お許しを出した模様である。
 渋めのなかなかイケメン店長さんは終始何か言いたそうだったが、威圧感により接客用語以外には何も言わせてもらえなかった。




 「制服のままのデートもいいものですね!」
 ぽかぽか陽気だが庇があるため決して暑くはないテラス席で、ナナは満面の笑みで冷たいほうのはちみつアップルティーを飲んでいた。
 お気に入りらしい。

 「そうだな。」
 微笑んで返した薔も、彼女のお勧めによりおんなじものを飲んでいる。
 組み合わせが可愛らしくてナナのときめきも相当である。


 (先日のドイケメンが学校の制服姿で来てる……)
 たまたま来店していた常連さんやなんかは凝視したいところを、ただならぬ“邪魔すんな”オーラによりそうもいかなかった。







 「あの……薔がヴァンパイアになられた、PVとやらはまだ完成しないんですかね?」
 「まだだろーな。」
 「そうなんですかぁ、早く観たいです……」
 テスト勉強に追われる間も待ち遠しくて、ずっと気にかけてはいたPVについてをナナはふと彼へと尋ねてみる。
 完成した場合はいち早く、屡薇がふたりのもとへディスクを届けてくれることになっていた。


 「早く完成しませんかね?前回のは女の子で可愛すぎましたが、今回はヴァンパイアでかっこよすぎましたので!」
 「前回のは何だって?」
 「……薔が女の子で可愛すぎました。」
 「そこはちゃんと答えんなよ、」
 いささか険しい雰囲気で確かめられたナナは、控えめになりながらも二度目を口にする。


 「だって、前回のは確かに薔がとっても可愛らしい女の子すぎましたよ!?」
 「開き直んじゃねぇよ。」
 はちみつアップルティーをごくりと飲んだナナは、ちょっとご機嫌ななめな彼を前に前回のPVをおさらいしたい衝動に駆られていた。

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