※※第205話:Make Love(&Beloved).120








 「あの……今、何て……」

 …――――おっしゃったんですか?



 肝心な部分が聞こえなくて、ナナは恐る恐る聞き返した。
 なぜだろうか、とても嬉しい言葉を与えられたはずなのに、こんなにも胸が切なく苦しく締め付けられるのは。

 「ん?あぁ、“何でも出来る”って言ったんだよ、」
 薔は彼女に向かって微笑むと、やさしくそのあたまをよしよしした。
 心地よさに、切なさや苦しさを忘れてナナも微笑み返す。


 テーブルのうえに置かれたノートを、大切にしようという気持ちは増して、

 ちゅっ…

 ふたりは戯れあうようなキスを交わした。

 そっと触れあわせただけで、放して視線を合わせると、笑いあう。


 チュ――――…

 次にまた触れあわせたくちびるは、すぐに放すことをしなかった。


 「ん……」
 りんごの匂いじゃ到底敵わない、大好きな甘い匂いに躰は火照りナナはやわらかな目眩を覚える。
 ゆびがそっと伝う髪まで、熱を帯びてゆくようだ。
 何度もリップ音を響かせ、くちびるを触れあわせながら、髪から滑ったゆびの背が頬を撫でる。

 「舌伸ばして…」
 ふっと放したくちびるをあたたかい吐息でなぞり、薔は囁く。

 「ん…っ、は……」
 潤んだ瞳で、小さく頷いたナナは言われた通りに舌を伸ばす。
 恥ずかしさのなかで、そろそろと。

 「震えてんな?可愛いよ…」
 途中、薔はわざと彼女の舌を吸って引っ張った。
 「は…っ、あ…っ、」
 ナナは感じてしまい、舌を伸ばしているのか伸ばされているのかが一瞬よくわからなくなる。

 彼は彼女を抱き寄せて、舌を絡めながらくちびるを奪ってゆく。

 「……っん、ん…っ、」
 再び触れあったとたんに、くちびるとくちびるは吸いつきあうように重なりあった。

 …ッ…じゅっ…ちゅぷっ…

 柔和に舌は絡みあい音を聞かせているけれど、激しく息の根ごと持っていかれそうなディープキスだった。


 「ん…っン、ん…っふ、」
 ナナは頬を撫でる彼の手に手を重ね、気持ちよさに麻痺すれば思わず滑り落ちてしまう。
 すると薔は頬からゆびを滑り落とし、彼女の手へと手を重ねてきた。

 腰は片手で支えるように、さらにつよく抱き寄せられる。

 「は……っ、」
 また舌は吸われて放され、くちびる全体を包み込むようにキスをされてから鼻の頭にもキスをされた。
 重ねた手には、ゆびが絡められる。



 「ナナ?」
 くちびるのすぐ近くで名前を呼んで。
 薔はゆびを絡めている彼女の手と共に、テーブルのうえに置かれているナイフへと手を伸ばした。

 「たまにはご褒美は…血液にしようか?」

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