※※第205話:Make Love(&Beloved).120
「いやぁ、こちらのザザえもんは、宝物になりますよ!ありがとうございます!」
ナナは夕食後の寛ぎの最中にも、大喜びで彼が描いてくれたザザえもんを眺めていた。
リビングのソファに、彼と並んで座って。
気を利かせた花子と豆はお部屋で仲良く熟睡タイムです。
テスト勉強はしっかりと目標を達成できた、となると待ち受けているご褒美にナナのドキドキもひとしおである。
「恥ずかしいからもうやめろよ、」
未だに照れている様子の薔は、彼女の隣でりんごを剥いていた。
食後の果実でございますな。
そして、ナナは思わず彼の手の動きに魅入ってしまいながら、
「薔は、宝物ってあるんですか?」
ふと、とても気になって彼へと尋ねてみた。
細く長く剥いたりんごの赤い皮を、皿の上へと落としてゆきながら、薔は微笑んで返した。
「もちろん、あるぞ?」
「そうなんですね!見てみたいです!」
ナナは彼の宝物を知りたくなって、食いつく。
ノートは大事そうにテーブルのうえへと置いていた。
リビングにはりんごの甘酸っぱい匂いが漂っている。
すると、
「そいつを俺にくれたのは……おまえだよ。」
薔は一切れのりんごにフォークを刺し、彼女へと手渡してきたのだ。
「えっ!?わたしですか!?」
肝心のナナには心当たりがまったくなく、びっくり仰天しながらりんごを受け取った。
「だからおまえにも見せてやんねえ…」
悪戯っぽく笑って、薔も一切れのりんごにフォークを刺す。
刺されたりんごからは、果汁がじわりと溢れだした。
「わたし……自分でもぜんぜんわからないです……」
ナナは小首を傾げて、シャリッとりんごをかじった。
「あっ、美味しいですね、このりんご!」
そしてとたんに笑顔となる。
その姿を見ていた薔は、くすっと笑うと、
「わからなくていいんだよ、俺の宝物なんだからな、」
彼女と同じように、滴るほどの蜜を持つりんごをかじった。
そう言われるとますます気になってしまう。
それはほんとうに目に見えるものなのか、ほんとうは目には見えないものなのか。
しばらくは黙って、一緒にりんごを食べていた。
きっと、互いに思いを馳せているのは“薔の宝物”についてだ。
彼にはそれがとてもよくわかっている、ナナは懸命に記憶を手繰り寄せる。
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