※※第204話:Make Love(&Make Love!).11








 「……屡薇の様子がおかしい。」
 「いつもおかしいけど確かにおかしいな……」
 メンバーたちは、いつも以上に様子がおかしいと思えてならない屡薇の姿に、息を呑み見守るしかなかった。
 ようやく入れた休憩中、鼻歌混じりにスマホ(りんごのほう)を見た後に屡薇の様子はおかしくなったのだ。





 (え?真依さん、チューってどこにしてくれんの?)
 スマホ(りんごのほう)をぷるぷると握りしめた屡薇は、ズキンときちゃったソコを制止するようにスタジオの隅にてうずくまっている。
 真っ先に確認したのはLINEでの彼女からのメッセージだったが、もうそれ以上は頭に入ってこなくなってしまっていた。

 (やばい、今すぐ真依さんに……チューしてほしい、俺のマグナムに……)
 思い描いていることにはいささか妖艶さがないのだが、屡薇が必死になって疼くマグナムとやらを鎮めようとしていると、

 「どっ、どうした?屡薇、大丈夫か?」

 ボーカルくんが心配そうな声をかけてきてくれた。
 世話好きの彼はやはりどうしても、放っておけなかったようだ。


 とりあえずそっとしておいてほしい屡薇は、ちょっと泣きそうになりながらもいちおう顔を上げてみる。

 「元気ねぇなら、これ飲んどくか?」
 すると、心配そうにしている摩闍は、屡薇はきっと連日のリハーサルで疲れているのだという自分なりの配慮から、栄養ドリンク「俺のマカ一本」を差し出してきたのである。
 元気がないときにはやはり精力をつけなければ……って今ありすぎて困っている!






 「摩闍ーっ!お前の優しさと余計なお世話に、ちょっと俺萎えたよ!もうありがてぇのかがよくわかんね!」
 「なんだと!?俺のマカ一本はいらねぇのか!?」
 「いらねーっ!」
 俺のマカ一本を巡って、男たちの白熱した闘いは特に繰り広げられていない。
 栄養ドリンクを拒絶された摩闍は憤慨し始める。




 「おれ、なんとなく屡薇の心情がわかってきた…」
 プライベートで屡薇が彼女と仲良くしている現場を目撃したことのある鴉姫は、メイクがばっちり施された顔でしみじみしている。
 「俺のマカ一本って、どこで買ったんだろ……」
 「さあ……」
 他のふたりも、しみじみし始め、

 「これけっこう高ぇんだぞ!?ジャングルで一本三千円以上すんだぞ!?」
 「ならお前が飲めよーっ!俺は真依さんに何とかしてもらう!」
 「なにーっ!?」

 ジャングルについては何だかごめんなさいですが、余計なお世話に勇気づけられた屡薇は勢いで真依へとメッセージを返した。
 ネットショッピングという入手ルートがわかったメンバーたちのしみじみは増す。




 “日曜日、仕事が終わったらすぐに俺んとこ来て!いつものスタジオにいるから!”

 次の日の月曜日は彼女の仕事はお休みです、スタジオに呼び寄せた屡薇は何を狙っているのやら。

[ 96/535 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る