※※第202話:Make Love(&Cuteness).119








 ううぅぅぅん……

 エプロン姿のこけしちゃんは、真剣に悩んでいた。
 ケーキはもう、当日に生クリームを塗って苺とチョコプレートを飾って完成ぇぇっ!というところまで来ており、すでに大きいタッパーに入れて冷蔵はしてあります。


 「このチョコプレートにいくつものぉぉ、白い薔薇を描いてもいいと思うぅ?ゲイちゃぁん、」
 こけしちゃんはプレートには、“ゾーラ先生お誕生日おめでとう!”と白いチョコペンで書く予定でいるのだが、周りに白い薔薇をいくつも描いてしまえば文字が目立たなくなるかもしれないと悩んでいるのだ。
 “ゾーラ先生”のあとにはピンクのチョコペンでハートを描く予定でいるこけし姉さんよ、いっそのことピンクのハートをいっぱい描けばいいのに。

 “おれに聞かれてもな、いっそ真っ黒でいっちまえよ、”
 今日のは本番であるために味見ができないゲイちゃんは、チョコプレートは買った当初のままでいけよというとてもシンプルなアドバイスを出してきた。


 「あぁぁ、悩むぅぅ。」
 “黒でいけ、黒。”
 やはりゲイちゃんは黒猫なだけあって、黒が好きなようです。

















 ――――――――…

 後片付けも一緒にした夕月はどこか名残惜しげに、如月の迎えでマンションを後にした。
 しばらくは日本に滞在するとは言っても、明日からは多忙になる、今日のこの時間は全て特別に裂いたものだった。
 だからこそ歩きたい気分に任せて、歩くこともできた。
 スーパーマーケットでは何とも意外な(偉大な?)遭遇までしちゃいましたが。




 お散歩中にこっそりキスをしてもらえると思っていたナナは、してもらえず、お預けを食らいずっと焦らされていた。
 只今ふたりはテーブルの前に並んで座って、テスト勉強の時間となっている。


 「どうした?今日は全然進まねぇな?」
 やけに耳もとで、薔は問いかけてくる。
 あたたかい吐息が耳に触れて、ナナはぞくぞくと感じてしまう。

 このままでは、お預けをされたままでは、テスト勉強に集中することができない。
 昨日解けた問題すらも、今日はわからなくなってしまいそうだ。


 「あの…、薔……」
 「ん?」
 わざとやっているのだろう、もうじれったくて、はやく欲しくて、筆記用具をノートの上に置くと控えめに彼の服を引っ張ったナナは勇気を出して上目遣いに訴えていた。

 「チューが、お預けされてます……」









 訴えた直後に、やさしくくちびるは奪われていた。

 「…――――これでいいか?」
 そっと触れあわせただけで、薔はくちびるを放していってしまう。

 撫でられるあたまが気持ちよくて、甘い匂いも蕩けそうなくらいに心地よい。
 誘い出されるナナはもっともっと、ディープなやつをしてほしくて、火照った顔で首を小さく横に振る。

 「欲しがりだな…」
 くすっと笑った薔は、彼女を抱き寄せた。

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