※※第202話:Make Love(&Cuteness).119
「ほおお…!どれも全部美味しいですね、夕月さんはすごいです…!」
お散歩のあとはいつもより少し早めの、夕食タイムと相成った。
さんにんぶんの食材を調達してきた夕月だが、ちゃんとわんちゃん用のご飯も用意してくれてありました。
夕月も一緒に食卓を囲むのは、もちろん初めてのことだ。
パリで生活している夕月のことなのでてっきり豪華なフランス料理で来るかと思いきや、意外にも食卓にはお味噌汁や豚肉の生姜焼きなどが豪快に盛り付けられて並んでいた。
「薔の作ったのとどっちが美味いか?ナナちゃん、」
「すみません、薔です!夕月さんのもとっても美味しいですけど!」
「ははは、だろうなあ。」
夕月の質問にナナは即答し、夕月はナナの答えに残念がることもなく安堵を覚える。
「恥ずかしいからもうやめろよ。」
薔はちょっと照れているようで、
「可愛いじゃないですかーっ!」
「そうだな、可愛いな。」
「やめろっつってんだろ?」
夕月がいるからこそのこれは形成逆転か?
「そういや、ふたりにちょっとしたプレゼントがあってな。」
「えっ?プレゼント!?」
楽しいお食事の最中に、夕月はふとチケットケースを差し出し、薔へと手渡した。
「今度俺の写真展が開催されるんだ、そう遠くもねえ美術館だからデートがてら一緒に観に来てくれ。」
じつは夕月はその打ち合わせのために、来日したのだ……というのが名目となっている。
本当はこの団欒を一番楽しみにしていたのかもしれないが、写真展のためにしばらくは日本に滞在する予定だった。
「おわーっ!すごいですね、夕月さん!おめでとうございます!」
興奮気味のナナはチケットに興味津々で、祝福の声を張り上げ、
「ありがとう、夕月さん。」
受け取った薔は素直に微笑んだ。
薔の反応に夕月も微笑んだが、その微笑はどこかとても哀しげに見えた。
薔はナナと一緒にチケットを見ていたため、誰もそのことには気づいていなかった、夕月でさえも。
「今日は夕月さんのおかげで、テスト勉強もしなくて済んだのでほんとうに助かりましたよーっ!」
「おい、」
「そうだったのか、何なら俺が勉強教えてやろうか?」
「ええ!?それは困ります!」
ナナが正直な気持ちで夕月に礼を述べたために、食事はまた盛り上がり、
楽しい時間が過ぎゆくのは、どうしても早く感じられるものです。
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