※※第168話:Make Love(&Engross).96






 撫でられる髪にゆびがそっと絡む。

 「ん…っ、ん……」

 やわらかく交わすくちづけでもう、全身は蕩けてしまい、

 「……キス、甘ぇな、」

 ふと、少しだけくちびるを離して薔は囁く。


 くちゅっ…

 「んん…っ、っ…」
 応える間もなく、深みを増して再開。


 感じてふるえる躰は知っている、キスはいつだって甘いということを。



 ゆっくりと絡まりだした舌と舌が、いやらしい音を響かせ、

 「んう…っん、ん…っ、」

 ぎゅっ…

 抱きつけば、抱きしめられる、伝わりあう体温の上昇まで伝わりあう。

 触れられただけで肌は、不思議なくらいに甘美な熱を持ち。

 「は…ふっ、ン、…ん、」
 夢中になるほどに、もっと淫してほしくなって、

 「はぁ……あっ、っ、」

 いったんくちびるが離されてゆくと、熱い吐息が乱れて零れ、唾液は細く糸を引いた。






 ドサッ――――…

 ナナはソファへと押し倒される。


 ぐいっ…

 「あ…っ、」

 上になった薔は、彼女の顎を持ち上げると、

 チュ――…

 また、息もできないほどのくちづけを落とす。




 「ん…っ、んんん…っ、」
 重なったふたりの躰が、艶かしく動くたびにソファが軋んだ。
 肌を伝うゆびが、しなやかに肌へと食い込む。

 吸いついて、舌を入れ、口内では自由に絡ませて、這わせ。


 「ん…っ、は…っん、」
 気持ちよすぎて、自然と泣けてきて、じわじわと蜜を帯びるそこは濡れるばかり。




 「ん…っは、…は…っ、あっ、はぁっ…」
 やがて、くちびるから離れたくちびるは、音を聞かせながら首筋へと伝い、

 ちゅっ…ちゅ…

 「あ…っ、あっ、…あ、」

 何度もキスをされていたのだけど、不意に、

 かぷっ…

 ナナは服を引っ張られ、首もとを甘噛みされていた。



 「ひゃっ…っ、」
 まったく痛くはなかったが、感じてしまい思わず高く声をあげる。

 「なぁ、おまえ知ってるか?」
 咬んだあと、今度はやさしくくちづけると、

 「俺がここを赤く染めちまったら…俺たちはふたりして消えてなくなるんだよ、」

 薔は囁いた。





 「え――――――…?」
 ナナはその言葉の意味を、理解しようと全てを傾ける。

 「一緒に生きようって…誓ったくせにな…、おまえはそれでもいいと思えるか?」
 彼は少し笑って、吹き掛けるように問いかける。






 「思え…ます…」
 何も迷うことはなかった、答えは自然と最初から、決まっていたのかもしれない。

 「だって、そこにはずっと…、薔が、いるんですよね…?」

 ナナは全てで応えた。

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