※※第168話:Make Love(&Engross).96







 バタン――――…

 仲良く帰宅です。
 花子と豆はお部屋で寄り添ってお昼寝中のため、もちろんお出迎えはなしでございます。



 「どーした?来いよ、」
 ちょっと意地悪く笑った薔だが、予想に反してか玄関でキスをしてはこない。

 「は、はいっ…」
 真っ赤になったまま、ナナはわたわたと彼についてゆく。
 途中のキスで疼いているため、すぐにでもくちびるを奪ってほしいと、つよく思い描いたけれど言葉にできないままで。








 リビングにふたりしてやってきたところで、

 「甘ぇもん食いたかったんだろ?」

 ジャケットを脱いだ薔はソファにふんぞり返ってしまった。


 「そっ、そうなんですよ〜!」
 頬を赤くして、元気よく返したナナは、

 ちょこん

 と彼の隣に並びます。
 並んだとたんに、羽織っていた上着はやさしく脱がされていた。





 「プ、プリンアラモードでしたら、しりとり負けませんでしたよね!」
 「まぁ、何れにせよ俺が勝ってたと思うけどな、」
 「ええ!?」
 ドッキドキのなか、ナナはプリンアラモードのカップの蓋を開け、

 ぱくっ…

 「美味しい〜!」

 食べ始める。
 けれど実のところはドキドキのあまり味の感動は曖昧だった。

 この状況で彼が買ってくれたデザートを食べるのは、何だか申し訳なくもなってくる。


 「よかったな、」
 隣にて、薔は彼女を見ながら笑っておりますが、

 「あっ!そうでした、薔にも一口でした!」

 思い出したナナは、慌ててスプーンにプリンと生クリームをすくうと、

 「どどどどどうぞ!」

 彼へと差し出した。








 差し出した後に、ここは「あーん」にすべきだったかと一瞬悩んだりもしたのだけど、

 「ん、」

 急接近した薔は、そのままデザートをすり抜け、

 ちゅっ…

 キスをしてきたのだ。





 さりげなく突然すぎて、ナナは瞬きすら忘れ、

 「俺はおまえのことを言ったんだぞ?」

 大胆にくちびるを舐め、彼は妖しい笑みを浮かべている。

 奪われるのではなく自ら差し出したその一口で、全ては奪われてゆく。




 「あー、でもやっぱダメだな、」

 そしていつの間にか、やさしく奪い取られたプリンアラモードはテーブルの上へと置かれ、

 「一口じゃ全然足んねえ…」

 あたまに片手をまわされ、引き寄せられるとキスは続行されたのだった。

 チュ――――…

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