※※第168話:Make Love(&Engross).96
陰を作る建物の外壁へと、背中が押し当てられる。
ぐいっ…
壁に片肘を突き、死角を作った薔はすぐに彼女の顎を持ち上げ、
「どうしてくれんだ?…誰にも見せたくねえ、」
くちびるを奪いにきた。
チュ――――…
「ん…っ、んっ……」
感じたナナは、躰をふるわす。
「声…漏らすのもダメだぞ?」
囁いてから下唇を甘く噛んで、薔はキスを続行する。
ちゅっ…くちゅっ…
舌が絡まりだす。
「……っ、っっ、」
漏らすことすら赦されていない声を、ナナは必死で我慢する。
頬を撫でていた手は、下へと伝い腰を抱かれた。
砕けそうでずっと、ふるえていたから。
「…――――――っっ…っ…」
激しさで溶かされそうで、想いが溢れすぎて息が止まりそうだ。
下着は否応なしに濡れてしまう。
「……っ、は…っ…」
やがてくちびるが離されてゆくと、ナナからは堪えきれず熱い息が零れ、
「おまえだって、一緒だろ?」
まだくちびるが触れあいそうな距離で、薔は吐息のように告げたのだった。
「誰にも見せたくなかったんだろ?」
……こくんっ…
火照った顔で、ナナは素直に頷く。
青空でさえも見下ろすことの、できないようなこの場所で。
「じゃあ…、伝え合ったから、帰ろっか、」
今度はやさしくキスをして、その赤い頬を撫でると、
「帰るまではこれ以上、キス…させんなよ?」
薔はまた彼女の手を取り、歩き出したのだ。
どういう表情で歩けばいいのか、わからなくなりそう。
だって、顔だけじゃなく全身はまだこんなにも火照ってしまっている。
ほとんどナナが欲しがったものだが、コンビニで購入したものはしっかり袋に入ったまま彼が下げている。
キスをしているあいだ、あれらがどこにあったのかもまったく思い出せない。
「急に大人しくなるなよ、」
「でででしたら、あれです!しりとりしていきましょう!えっと…、プリン!」
「…おまえ、俺の言った事ちゃんと覚えてんのか?」
「あああ!負けちゃいました!」
……ちなみにナナが買ってもらったのはプリンアラモードですけどね。
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