※※第168話:Make Love(&Engross).96
以前、ナナがアルバイトをしていたコンビニに入ると、
「ぃらっしゃあせ〜!」
よく知った声が掛けられたが、これは例の元チーフの声ではなかった。
「………………。」
ナナと薔の雰囲気には、近いものがある。
「えええ!?オドレイ!?」
「何であんたこんなとこにいるの!?」
びっくり仰天したは、無事に卒業できたベン先輩ことベンジャミンだった。
やや懐かしきちっさいオトコことベンジャミンは只今、店内の清掃をしているのだと思われる。
「おい、それ以上俺のナナに近づいてみろ?何も詰まって無え脳天そいつで突き刺してやるからな?」
「ひぇぇぇぇえええ…!」
薔の殺気は凄まじいもので、ベンジャミンは恐怖とときめきに恐れおののく。
ナナは彼の険しさに胸キュン。
※ちなみに“そいつ”とはモップのことでございますが、モップというものは決して、脳天を突き刺したりするために手にするものではございません。
どうやらベンジャミンは高校を卒業できた後、こちらのコンビニでアルバイトを始めたようだ。
元チーフはバイトの後輩をほっぽって、レジの下へと雲隠れしちゃっている。
「金輪際俺たちの視界に入んじゃねぇぞ?」
「かかかしこまりましたぁ!」
脳天を突き刺す勢いで言い聞かせた薔は、そのままナナと一緒にお買い物を始めた。
「あっ!このジュース美味しそうです!」
「欲しいなら入れろよ。」
……買い物カゴにね、買い物カゴ。
じりじり…
ベンジャミンは清掃をしながらも、ふたりが店内を移動するたびに視界に入らない場所へ移動しなければならないという難行を強いられている。
(ベンくんがレジを打てないということは、店長を呼ばなければ…!)
レジの下にてぶるぶると震えている元チーフは、裏方へ通ずるチャイムを押し店長を呼び寄せた。
「あらぁ、ナナちゃん、お久しぶり!」
「こんにちは!」
いそいそと裏方より出てきた店長は、明るくナナへとご挨拶。
さりげなく薔も会釈。
(イケメンは会釈もイケメンだわ〜!)
お花を飛ばせる店長は、レジへと向かい、
「視界に入んな、つったよな?」
「すすすすすみません!」
ナナと薔が振り向いたため視界に入っちゃったベンジャミンは、青ざめながらドキドキ。
「そういえばベンくんは同じ高校だったわね〜、ヤキモチね〜、青春ね〜!」
「せ、青春…ですね…」
店長さんはやたらとウフフとしております!
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