※※第167話:Make Love(&Honeyed).95
結局、昨日あかりに襲われかけたナナを一人では学校に行かせられないため、市販の風邪薬を服用した薔はマスクを掛けての登校となった(朝食は残り物やなんかで済ませました)。
「寒ぃな、もっとくっつけよ。」
「あっ!はい!」
寄り添って登校していったふたりを、
“ナナちゃん、ご主人さまをよろしくお願いします…”
花子が恭しく見送っていたんだとさ。
――――――――…
(薔さまがマスクをしてらっしゃる!)
朝から皆さんの、心配も相当だ。
(マスクというアイテムをこれほどまでに残念なアイテムだと思ったことは未だかつてございませんが、同時にマスクでも決して隠しきれないあの溢れんばかりの美しさ…!すばらしい…!)
そして、えもいわれぬ感動すら覚えて大感心。
「お薬効いてきましたかね?」
ナナは歩きながら彼のおでこに手を当て、
「おまえが触れると熱くなるに決まってんだろ?」
「ほわあ!?」
ふたりはまさしくふたりっきりワールド全開である。
……羨ましすぎる……
その様子に周りが惚れ惚れしていると、
「三咲せんぱーい!」
何と、あかりの声が聞こえてきたのだ。
やや青ざめたナナと高熱があるにも拘わらず殺気立った薔がそちらを見ると、
「おはようございまーす!」
あかりは、道路を挟んだ歩道の電柱の影から手を振っていた。
「ひぇえ!」
ナナはむぎゅうっと彼氏に抱きつき、
グイッ――――…
何も言わずに薔は、彼女を強引に引っ張って歩きだした。
(ひぇぇぇぇぇえええ!こっちに来たーっ!)
今度はあかりがかなり青ざめる番となる。
彼女と共に道路を渡りきると、
「俺のナナに何か用か?」
わざとマスクを外し、薔はあかりに迫った。
ナナはキュンキュンしちゃっている。
「だって、あたし、三咲先輩のこと、まだ好きだしっ…」
競競とするあかりは後ずさる。
けれど電信柱が行く手を阻んでいる。
すると、薔は不敵に笑って、
「端から一縷の望みすら無えくせにな…」
威風堂々と言葉を残していきました。
「お前が本当に好きなのは、こいつじゃなくて自分だろ?」
(えっ、偉そうに…!)
寄り添って歩いてゆく後ろ姿を、あかりが見送っていると、
「ちょっとアンタ!何やってんのーっ!?」
「えっ?」
襲いかかってきたは、親衛隊の皆さんからその他大勢まで。
「ちっとも懲りてないね――――――――っ!」
「だから誤解ですってばーっ!」
逃げ惑う、あかりだが、
(でも、あの勇敢なお姉さまもかなりタイプ…捕まえてほしいかも…)
果蘭に心揺れ動き、ハァハァしちゃってた。
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