※※第198話:Make Love(&Pornography).116








 ぶるぶるぶるぶるっ…

 黒のベスト風エプロンを着けた渋めのなかなかイケメン店長さんは、ふるえながら目の前に座っているふたりを見ていた。
 ロッカーがある、事務所にて。
 一日から短期のアルバイトということもあり、履歴書は不要だった。


 「えええ…!?」
 グーにした両手でごしごしと両目を擦ってから、離してしぱしぱさせ、再び両手でごしごしと両目を擦って離すと、店長さんは息を荒げる。

 「えええええ…!?」








 「………………、」
 なぜか大興奮している様子の店長を怪訝に思った薔は、やや険しい雰囲気となり黙って振り向いてみた。
 店長は男、これだけ奴が興奮している理由は、言いつけを守らず花子の引き留めもむなしく彼女がこっそり後をついて来てしまったからではないかとそんなようなことを思ったのだと。



 「いっ、いいね!君、謙虚だよ!謙虚いいね!接客には大事だよ!」
 店長さんの琴線にはばっちり触れたようだ。

 (謙虚……)
 隣に座っている薔を見ながら、ここでも日本語の勉強が必要かもしれないと羚亜は思っていた。


 「うちのカフェね、イケメンを売りにしてるから!ほら!」
 店長さんは得意げに、自分を指差す。

 「ほ、ほんとですね!」
 気を遣う羚亜と、
 「そうですね。」
 ほとんど興味がなさそうな薔だがいちおう微笑んでみせた。


 きゅうん…っ

 (ものっすごいイケメンにイケメンて言われた…)
 適当に同意されただけにも拘わらず、店長さんはめっちゃときめいた。

 じつは薔は、イケメン店員が売りのカフェということで、彼女の同伴を許さなかったのだ。



 ……ここでついに明らかになりましたが、ふたりがアルバイトをする予定でいるのは、制服の黒のベスト風エプロンがスタイリッシュでお洒落なカフェなのでございます!
 景色をダイレクトに眺めながらお茶ができる開放的なテラス席も設けられている、ちょっとした隠れ家的なカフェとなっております。


 日雇いや短期のアルバイトはテラス席が人気となるような繁盛期に合わせて募集しており、たまたま彼女とのデート中に羚亜がチラシを発見したのである。
 オシャレ感を出すために、チラシはピンク色にしてみました(※店長談)。


 「さっそく制服持ってきたいんだけど、サイズは!?」
 「えっ!?採用!?」
 イケメン店員を売りにしていることもあり、大興奮の店長さんはさっそく貸与する制服を取りに行こうとした。
 その前に渡すべき書類があるとは思われるが。

 「………………。」
 見事に採用されたっぽいため、薔は彼女が待っているマンションに一刻も早く帰りたくなっていた。

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