※※第196話:Make Love(&Fixate).114
スタジオでは何が何だかわからないまま、スタッフたちが撮影の準備を改めて忙しなくしている。
「何?ヴァンパイアだからハーフの俺が気に入らねぇの?」
控え室に連れてくると、屡薇は初日へと詰め寄った。
ちなみにちゃっかり、真依も連れてきちゃいました。
(う……)
図星の初日は痛いところを突かれ、押し黙る。
「まぁ、確かに俺ら人気出てきてるからさ、ヤキモチ妬くのもわからなくもねぇけど、」
珍しくイライラしている様子の屡薇は、荒っぽく頭をかくと、
「だったら正々堂々と音楽で勝負しなよ、それならちゃんと受けて立つし。今の状態じゃやること小学生以下になってるよ?アンタら。」
言い放った。
(珍しくまともなこと言ってるかも…!)
真依はキュンキュンしちゃっている。
が、ここで重要なことを思い出し、初日を指差した真依は憤慨しながら叫んだ。
「そもそもあんたら屡薇くんたちとジャンルぜんぜん違うじゃん!」
「え?そうなの?どうりで、雰囲気めっちゃ爽やかだと思った、“漆黒の闇”とか“血塗られた十字架”とか歌詞に使わなさそうだもんね。何系なの?アルプスのヨーデル系?ヴァンパイアが勢いでバンド始めちゃいました系?」
「そんなジャンルないよね!?」
「いいじゃ〜ん、自信家なおたくらがこれから確立してゆけば。って、あ、おたくらってのは、決してヲタクのことではなくて…」
「それくらいわかるよ!」
ここでは既に屡薇のペースで、真依はふるふるとふるえながら笑いとときめきを堪えている。
そんななか、
「薔っ、大丈夫ですか?」
「おまえがいるから大丈夫だろ。」
血の流れている彼のゆびさきを、ナナが必死になって心配していた。
薔は彼女を安心させようと、傷のついていないほうの手であたまをよしよししている。
じっとりというかむしろ蔑んだような視線を屡薇と真依に送られ、初日は猫背に冷や汗となる。
「俺の傷はぜんぶ、おまえがいればすぐに治るもんな?」
「薔……」
ナナを真っ直ぐに見つめて微笑む薔だが、わざとらしく初日に聞こえるよう口にした。
「だから一緒だよ、俺もおまえも…」
彼の口元には未だ鋭い牙が光っている。
「うううっ……薔ぅ…っ、わたしもうガマンできないですっ…」
やさしい言葉に感動するあまり、ナナはとっても素直な声を張り上げた。
「薔がいっちばん、さいっこうに、ヴァンパイアお似合いすぎてて噛まれたいです――――――――――――っ!」
うーっ、ぅーっ…(※ヴァンパイアよりヴァンパイアらしいです!なエコー)
「……ほんとに咬むぞ?」
「噛んでください!」
それよりはやく傷の手当てをしてあげてよ。
立派なヴァンパイアであるナナが噛まれたいというくらいのお墨付きを立派な人間である薔がもらい、立派なハーフの屡薇はまぁいっかの心意気で笑い出し、真依も思わず吹き出し、ヴァンパイアである初日は立つ瀬がないのであった。
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