※※第195話:Make Love(&Sex aid).14













 …――――――悪戯に指でなぞって、棘のように囁いて、

 深く沈み堕ちるほどの眩暈を憶えさせて。















 「ん〜、真依さ〜ん、行ってらっしゃいのチューしてよ〜。」
 あきらかに語尾にはハートマークがついております、屡薇は玄関先で甘えた声で彼女へと迫った。
 「やだっ、屡薇くん、気持ち悪い!」
 真っ赤になった真依は両手で彼の顔を押し退けている。
 今日は月曜日で仕事が休みのため、屡薇の部屋の掃除などをしてあげようと意気込んでいた真依だが、止めて帰ろうかとすら考え始めている。

 「ほんとは俺の事大好きなくせに〜!」
 「ちょっとこれ、朝から何モードなの!?」
 屡薇は諦めきれずにチューをせがむものの、真依は全力で拒否している。
 玄関先であることが、恥ずかしさに拍車をかけてもいるのである。


 そんななか、

 ガチャ――――…

 お隣さんのドアが開いた。


 いったんそちらへ目をやった屡薇と真依は、てっきりお隣夫婦(ではまだないけど)が出てくるのだと思っていたのだけど、

 「あっ、屡薇ぃ!おっはよ〜!彼女とラブラブいいね〜!」

 ひょこっと出てきた、わりと背の低い男性に陽気に挨拶をされたのである。


 真依は照れて真っ赤だが、そのわりと背の低い男性の主に顔を凝視した屡薇は、怪訝そうに返した。

 「えっと……だれ?」










 「あっ!やべ、おれすっぴんだった!」
 鴉姫は青ざめ、再び玄関へと戻ろうとした。
 「その声と身長は、もしかして鴉姫?」
 上から下までまじまじと眺めてみたりして、ようやく自分のバンドのメンバーだと屡薇は気づけたようだ。

 「ごめん、ぼんやりし過ぎてて誰だかよくわかんなかった…」
 「もうそれいいよ!」
 心底申し訳なさげに告げられた屡薇の言葉に、鴉姫は仰け反る。
 ついに、メンバーの一人に“ぼんやりし過ぎた素顔”が明かされた感動的な瞬間でございます。



 そこへ、

 「ああっ!ちょっともうですね、夜中は大変だったんですよ!?フウちゃんも聞いてくださいよ!」

 お隣夫婦(ではまだないけど)が登校のため顔を出した。
 ナナは朝からいきなり、屡薇と真依を見たとたんに憤慨し始めた。
 鴉姫は畏縮して猫背になっているため、余計にちっちゃく見えていた。

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