※※第194話:Make Love(&Thickness).113








 「良かった〜、救世主ふたり発見〜!こんばんは〜!」
 突然ナナと薔は、ホロリとする見知らぬ(と思われる)背の低い男性に声をかけられた。


 「どこのどいつだ?」
 「どこのどいつですか?」
 ふたりしてほぼおんなじことを返してあげると、

 「あっ!やべ、そういやおれ、すっぴんだった!」

 焦った男は照れくさそうに、頭をかいて改まった。

 「その節と新曲についてはどうも、お世話になります…FeaRのベーシストの鴉姫でーす……」

 と。



 ベーシストとはどういった意味合いなのかよくわかっておらずとも、身長から悟ったナナは心配そうな声を掛けた。

 「どうしたんですか!?まさか顔を蜂にさされたんですか!?大丈夫ですか!?」







 「いやこれ、すっぴんで…」
 「何ヵ所さされちゃったんですかぁあ!?」
 鴉姫は困っているが、心配のあまり身を乗り出しそうになった彼女を引っ張って薔は笑いを堪えている。

 このとき、急に閃いた鴉姫は、

 「そうなんです、おれ、蜂にさされて困ってるんです!だから、ふたりのところに今夜だけ泊めてください!」

 お願いしてみた。



 「とりあえず病院に行ったほうが」
 「駄目に決まってんだろ。」
 未だ蜂にさされたのだと思って疑わないナナは夜間救急を奨めようとしたのだが、遮った薔の雰囲気はとたんに険しくなった。
 無論、蜂になど一ヶ所もさされていないことを薔は知っております。

 「お前、女いねぇのか?」
 「セフレなら数多…」
 「ろくでもねえ男だな、そのうち痛てぇ目に遭うぞ?女を何だと思ってんだ?」
 「ごめんなさい…今遭ってるかもしれないです……」
 彼女との時間を邪魔されるわけにはいかない薔は、鴉姫を見下ろし厳しく説教にまで発展した。
 もしかしたらストーカーは……と思った鴉姫はとたんに反省の色を示す。
 厳格な彼氏の雰囲気に、ナナさんたいそううっとり。


 「何があったか知らねぇが、そのぼんやりし過ぎた素顔を明かすいい機会じゃねぇか、とりあえずメンバーでも頼っとけよ。」
 「ぼんやりしすぎた素顔!」
 この、“ぼんやりし過ぎた素顔”というのはまさに的確な表現と思っていただきたいのだが、薔が立派に諭したあと仰け反った鴉姫はふと、ぽつりと明かしたのだった。

 「じつは、おれ、ストーカーに遭ってるっぽくて、今、外に出るのがこわいんだ…」







 「そういうことなら早く言え、俺とこいつで送ってやる。」
 事実を知った薔はどうやら、マンションの屡薇の部屋まで鴉姫を送ってくれるようです!
 ぼんやりし過ぎた素顔を明かす、いい機会だもんね!

 「ありがとう〜!優しすぎる!」
 ぼんやりし過ぎた素顔と形容された後にも拘わらず、鴉姫は感涙にむせた。


 ……って、今夜は、まずいような……




 「ザザえもんの一番くじはどうするんですかぁ!?」
 「おまえの欲しいのが出るまで引いてやるに決まってんだろ?」
 「やったあ!」
 しかしながらどうやら、最優先はザザえもんの一番くじのようである。


 もちろん狙うは一番ですので、屡薇くんセーフか?

[ 453/537 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る