※※第194話:Make Love(&Thickness).113
「…――――――っん…」
薄暗い玄関で、真依はくちびるを奪われていた。
心なしか、今夜の彼とのキスは、ちょっとだけ血の味がする気がしていた。
初っぱなから音を立てて舌が絡められ、息をするのもままならないほどに、吸いつかれて目眩すら覚える。
足元がふらつけば、さらに強く抱きしめられる。
抱きしめてくる躰も、抱きしめられている躰も、とても熱くなっている。
互いにそれを嫌というほど感じている。
「は……っ、」
少しだけくちびるを放して、射し込む明かりに浮かべて視線を絡めあうと、
「真依さんのここ…まだ血ぃ滲んでるね、ごめんね?」
「あ…っ、ちょっ…っ、屡薇く…っん、」
屡薇はゆっくりと、残してしまった傷口に向かってくちびるを這わせてゆく。
「ダメ…っ、こんな…とこで…っ、」
と、口にしている自分はどうして、もっと本格的な抵抗を見せないのだろうか。
「そう言いながらもエロい声で煽ってんのはさぁ、真依さんじゃん?俺もう我慢できねぇし…」
一度傷口に吸いついてから、息を荒げ、屡薇はさらに下をくちびるで目指す。
「本能のままに…ってやつかなぁ?乱したくてどうしようもねぇの、マジで…」
「そんなこと…っ、言われても…っ、」
玄関でエッチなことをしていることもあり、真依はとっさに片手で口元を覆った。
「寄りかかれるとこ、あったほうがいいね…」
そんな彼女を抱いて、背中をドアへと押し当ててしまうと、屡薇は彼女のブラウスのボタンを外してゆく。
真依はそっと、口元から手を離すと、
「髪の毛っ、ついてるかもだから…っ、シャワー、浴びたいよ…っ、」
気になっていたため、振り絞った。
「だーめ、言ったでしょ?俺もう我慢できねぇの…」
躊躇うことなくボタンを外し、左右に広げてしまうと、屡薇はボトムスのうえからいきなりソコへと触れてきた。
「真依さんのここだって、一緒じゃねぇの?」
「……っっ、も…っ、」
濡れていることが、バレてしまった。
一番に隠したいのに、今も隠れてはいるのに、もう隠すことができなくなる。
「ヌルヌルしてるみてぇだけど…」
屡薇はゆびを動かしながら、背中を抱いてブラジャーのホックを外す。
「……ばか…っ、」
ふるえる声で返した真依の肩からかたほう、ブラウスが滑り落ちる。
「知ってるよ〜?」
笑う屡薇はブラジャーの中へと片手を滑り込ませる。
「あ……」
胸を揉まれふるえてしまった真依の視界には、廊下に転がったジャガイモが映り込んだ。
いつの間に落とし、いつの間に転がったのだろう。
薄明かりに照らし出されひっそりと息を潜めるそれを見て、今夜の献立はカレーだったことをかろうじて彼女は思い出せていた。
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