※※第194話:Make Love(&Thickness).113
ナナの肩に触れようとしたベンジャミンの手は、触れることなく握りつぶされるほどに強く掴まれていた。
「何やってんだ?」
雰囲気は打って変わり、一寸先は惨状である。
……ひぇぇぇぇぇえええ…!
ベンジャミンは激震しながらも、興奮しちゃってます。
「俺のナナに触れんじゃねぇよ、ぶった切ってやろうか?」
薔の雰囲気はそら険しいですが、ナナはもう真っ赤っか。
くれぐれも、ぶった切るのは指のことだよね?
ベンジャミンは恐怖と興奮のあまり、口をパクパクさせているばかりで謝罪が言葉にならない。
手を掴んでもらえているベンジャミンに、なんだかイラッとしたナナさんは、
「そんなに触っちゃダメです!」
「あ?」
彼の手をベンジャミンから引き剥がさせた。
「こいつはおまえに触れようとしてたんだぞ?」
「でも、薔に触られて絶対に喜んでましたよ、気持ち悪い顔してましたもん!」
「そんなん生まれつきだろ、いいから素直にヤキモチだって言えよ。」
「恥ずかしいですよ!」
とたんにふたりは、ふたりっきりワールド全開である。
ベンジャミンは黙って、買い物カゴにカップ麺を戻しながら自分はマゾなのだと確信していた(今さら)。
「青春だわ〜!あたしも戻りたいな、あの頃に!」
ベンジャミンと交替でレジに入った店長さんはキュンキュンしているようだが、元チーフはレジの下に隠れてガクガクブルブルしている。
こんなふうに店内は、じつに和やかとなっているなか、
(けっこう近くにコンビニあって、良かった…!)
一人の客が息を切らし、来店した。
何者かに後をつけられ必死になって逃げ惑っていた鴉姫は、そういえばこの近くには屡薇のマンションがあったなと気づいた頃に、運よくコンビニの看板の明かりを発見した。
このときほどコンビニの看板が、神々しく見えた瞬間はない。
藁にもすがる思いで入り口まで全速力で走り、中に入ったのだが、彼の後をついて誰かが入ってくる気配は今のところなかった。
もし入ってきたのなら人相を確認してやろうと意気込んでいたのだが、やはり向こうもそこは警戒しているようだ。
帰ったのか、待ち伏せしているのか。
このままでは安易にコンビニから出ることができない。
「ベンくんお疲れ様〜!」
「お疲れ様です、お先にかたじけない…」
と、どうやらこのコンビニのバイト上がりである青年(でいいか)とすれ違った鴉姫は、
「屡薇に電話して、迎えにきてもらおうかな…」
スマホ(りんごのほう)を取り出した。
その瞬間、
「ええっ!?ザザえもんのっ、一番くじ!?」
「おい、」
聞いたことのある声が、背後から聞こえてきたのだった。
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