※※第193話:Make Love(in Clubroom).112








 何となく、ではあるが、彼氏のマンションに寄らなければならないような気がして、真依は仕事を終えてから屡薇のもとへと向かった。
 何となく、ではあるが、彼はもうマンションで待っている気がしていた。


 インターホンを鳴らすと、案の定彼は出てくれて、何事もなく通された真依はエレベーターで15階へと昇っていった。
 エレベーター内では終始、このドキドキをどうにかしようと若干挙動不審となっていたが。



 辿り着いた彼の部屋でチャイムを鳴らすと、

 「待ってたよ、真依さん…」

 出迎えてくれた屡薇の後ろ、なぜか部屋の明かりはひとつも灯っていないようだった。

 「お邪魔します……」
 何かちょっと妖しいな……と思った真依は、彼に案内されて玄関へとゆっくり足を踏み入れる。

 「もしかして屡薇くん、曲作りしてたの?あたしほんとに邪魔だったかな?」
 そして照れ隠しに真依は、彼のほうを見ようともせず尋ねてみた。

 「そんなわけねぇじゃん、会いたかったよ?」
 屡薇は笑いながら、どうやら後ろ手にドアを閉めたようだ。
 ドアの閉まる音になぜかビクッとなった真依は、余計にドキドキしてこの場から逃げ出したい衝動にも駆られた。
 リビングはカーテンもドアも全開なのか、外から入り込む明かりは玄関までうっすらと届いてくる。


 「あの……屡薇くん?」
 明かり点けないの?という意味合いで、真依は振り向こうとした。

 「真依さん…」
 ところが、その肩を後ろから抱いた屡薇は彼女の首筋へくちびるを寄せると、

 「俺……傷を治す力ねぇから、浅く咬むからね?」

 囁いたのだ。

 「痛かったら…言って?」














 ――――――――…

 ギターの一人がラブに及ぼうとしている頃。

 何かあったらすぐに連絡してとメンバーに言われているベースの鴉姫は、自宅が比較的スタジオからは遠く、夜道を早足で歩いていた。
 途中のトイレでメイクは落としてきたため、メンバーもここで会ったとしても自分のバンドのメンバーだとは気づかないだろう。

 背後から、足音がついてくる気がしている。


 (まさか、おれが可愛いから、ストーカーか!?)
 と考えを巡らす鴉姫は、自宅の近くまで来ていたのだが。
 万が一突き止められてもまずいと思い、途中で進路変更をしてしまった。

 すると足音も進路を変える。

 (ひぃぃぃいいい…!)

 焦った鴉姫は、ここから一番近いメンバーの家はどこだろうと必死になって考え始めた。
 そこは突き止められてもいいんだ。




 ……初めての吸血行為や、もしかしたらストーカー?などなどございますが、物語はここらへんで次回へと続きます。














  …――Is everytime full of ups and downs!?

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