※※第193話:Make Love(in Clubroom).112
「あのぅ……薔……」
休憩中に水分補給をしながら、ナナは隣の彼へと尋ねてみた。
「大丈夫…ですか…?」
と。
どうも本日の薔は、心ここにあらずと言うか、何かを考え込んでしまっている様子なのだ。
昨日のこともあるため、ナナは気がかりでならない。
「…――――あぁ、やっぱ心配なんだよな…」
彼女に声を掛けられると、意外にも素直に、薔は溜め息混じりに肩へあたまをもたせてきた。
彼は水分補給もままならずにいたようで、ナナが紙コップに用意してあげたミネラルウォーターもほとんど手付かずとなっていた。
「おまえを誰にも見せたくねぇんだよ…」
「………………!」
いい匂いとちょっと甘えるような仕草にも再びノックダウンしそうになったナナだが、真っ赤っかになりながらも懸命に堪えた。
ここでぶっ倒れでもしたら、見た目には押し倒されることとあまり変わりはないようになってしまう。
ほっぺたにやわらかく彼の髪が触れるのがまた、気持ちがよくてどうしたらいいものか。
そんな彼女の事情を知ってか知らずか、薔はゆびにそっとゆびを絡めてくる。
「一ミリですらも嫌だ……誰にも見せたくねえ……」
(おおおぉわぁぁぁあああっ!可愛すぎるけど、震えるな!わたしっ!このひとまで震えちゃうから!)
ぶるぶるとときめきにふるえてしまうナナだが、必死になって心に言い聞かせる。
絡めあうゆびで、熱を伝えあっているから鼓動も否応なしに速まってしまい焦る。
「だだだだだ、大丈夫ですよっ……わたしにはっ、薔がっ、おりますのでっ……」
それでもナナは、悶え死にを堪えながらどさくさに紛れて彼のあたまを撫で撫でし始めた。
左肩にあたまをもたせられながら、右手で。
左手にはゆびを甘く絡められてるので。
「……乱してぇのか?」
「おお落ち着かせたいんです!」
「まずはおまえが落ち着けよ、」
「それもそうですね!」
撫で撫でよりやや、手つきは激しかったようです。
ナナは鼓動を抑えるのに必死で、鼻息を抑えることを怠っている。
ぶるぶるぶるぶるっ…
ここは演劇部の部室ですので、赤面してときめく周りは見ないように心掛けるのに精一杯だった。
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