※※第193話:Make Love(in Clubroom).112








 彼氏のマンションからの出勤途中で、真依はコンビニへと立ち寄っていた。

 「いらっしゃあせ〜!」
 営業スマイルを向けてきた店員さんは、短めだがふわふわの金髪がなかなか目立っている上に体つきは水分を含んでいるかのようだった。
 同じ金髪でもどうしてこんなにも雰囲気が違うのだろうかと真依は思ってしまった。
 店員さんの名札には“ベンジャミン”と書かれているコンビニでございます。




 時間は余裕で間に合う。
 真依は真っ直ぐに、雑誌コーナーへと立ち寄った。

 (屡薇くんを探しにきたわけじゃないんだけどね、コンビニで専門雑誌とか見たことないし…)
 とか言い訳しながら音楽雑誌コーナーを、まじまじと眺めていた彼女は、

 「……あれ?」

 ふと一冊の雑誌に目を留め、引き抜いてみた。
 それは特にヴィジュアル系専門の雑誌とかではなく、表紙に写っていたバンドは皆メイクとかはしておりませんでした。
 Peonysはどうやら、四人編成のポップロックバンドのようだ。

 「あいつらってそもそも、屡薇くんとジャンル違うじゃん…」








 「興味を持っていただけたのかな?」
 突然、すぐ後ろから声はした。

 真依はビクッとなる。



 振り向くと、いつの間に現れたのだろうかそこには初日が立っていた。
 微笑を浮かべているところがどうも解せない。

 「あたし、すごく好きなバンドが他にいて、そのバンドにしか興味ないので。」
 はっきりと返した真依は、雑誌をもとの場所に戻す。

 「てか彼氏にしか興味ないので!会う度何か気持ち悪いことばっかり言わないでくれる!?むしろ目の前に現れないで!」
 そしてまた振り向くと、さらにはっきりと堂々と返した。



 「潔いなあ、そういう子けっこう好きなんだけど…」
 初日はただニヤニヤと笑っている。
 一瞬ぞくりとした真依は、とにかく無視を決め込むこととした。


 「僕ならこのまま君を職場まで送ってあげてもいいよ?」
 初日は後をついてくる。
 今注目のバンドメンバーが、こんなところでこんなことをしていていいのだろうか。

 だんだんイライラし始めた真依は、雑誌を立ち読みさせてもらったこともありとりあえずペットボトルのお茶だけ買ってコンビニを出ようと心に決めた。




 それでもしつこく話しかけられ、真依が困りながら店内を歩いていた、その途中で、

 がしいっ…!

 何者かが初日の肩を、強く掴んできたのである。

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