※※第192話:Make Love(&Craze).111
「…――――だいたいさぁ、ハーフの分際で生意気なんだよねぇ…」
某スタジオにて、クスクスと笑う見た目にはまるで少年が、ゴミ箱へと豪快に企画書を投げ捨てた。
「まぁ、ハーフ故の憧れってやつじゃね?」
わざとライトを避けて暗がりで煙草を吹かす、姿があまりよくは窺えない男が返す。
その男に並ぶもう一人は、ただ黙り込んでいる。
「一番生意気なのは、ハーフじゃないかもしれないよ?」
用意されたテーブルに着き、その上に飾られた牡丹の花びらをゆびで揺らしながら、初日は笑って言った。
大いに、キザったらしく。
「せっかくだからさ、僕たち皆でヴァンパイアは演っちゃおうか、」
「いちおう…本物だし。」
――――――――…
「こら、目ぇ瞑ってろよ。」
バスルームにて丁寧に、薔はナナのあたまを洗ってあげていた。
「こ…っ、これで目を瞑るのは、惜しいんですけど…」
正直に返したナナは、ひとまず片目だけ瞑ってみる。
鏡の前で、後ろからあたまを洗ってもらっているため、視線はどうしても彼の躰にいっちゃいます。
「泡入っちまったらどうすんだ?」
「あっ…あの…っ、息…っ、かかって…るんですけど…っ、」
「あ?」
薔のことですのでわざとやっているのかもしれませんが、濡れた耳の近くで言葉にされナナはビクビクとふるえてしまう。
「――――――――…」
意地悪されながら、ナナは熱を帯びた視線で鏡の中の彼を見ていた。
シャンプーの甘い匂いがバスルームを包み込んでいる。
「おまえな、ちゃんと俺の言う事聞けよ…」
跳ね返る視線に気づいた薔は、鏡の中の彼女へとちょっと妖しく笑いかけ、
「あ…っ、はいっ…」
ナナは慌てて、両目を瞑った。
「って、当たってますっ…!」
「おまえがエロい顔して俺を見つめてくんのが悪い。」
「んええ…っ!?」
無意識のうちに、視線で誘惑もしていたようで。
…――――彼が危うげな姿を見せてくれるほどに、愛おしくなる、その想いは誰にも止められない。
目を瞑るナナにはより一層、薔のゆびの動きが心地よく感じられていた。
同時に、切なくて甘くて胸が締めつけられる。
愛は深まったが一部不穏な気配も深まり、日曜日の夜には屡薇も牙を剥いちゃうのだろうか?
…――That would be dripped sweetly.
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