※※第191話:Make Love(&Sex aid).13
(あー、真依さんの血吸っときゃ良かったな……って、何考えてんだよ、俺……)
山梨の夜のことを想うと、牙が疼いてしまう屡薇は片手で口元を覆った。
ついでにもう一ヶ所、疼いてしまう部分はございますが。
ツアーも終盤で、リハーサルの休憩中であることも一瞬忘れてしまう勢いである。
「ちょっと屡薇、聞いてるの!?」
「え?あぁ、ごめん。聞いてなかった。」
そんな屡薇は只今、マネージャーにとある話を持ち掛けられていたところで、ほとんど上の空だったためムッとしたマネージャーさんは改めて言いました。
「だから、今度の新曲はテーマがヴァンパイアでしょ?“Stars”がヒットしたこともあって、新曲のヴァンパイア役をあの子にやってほしいって社長が言っているのよ。」
と。
「え〜(立派なヴァンパイアは嫁さんなのに)!」
ここに立派なハーフもいるのに。
屡薇は一驚した。
「出演交渉お願いね?前回よりギャラは弾むから!」
「ギャラで薔ちゃんは釣れねぇよ〜、嫁さんから固めてかねぇと。」
「嫁さん?」
高校生なのにもう嫁さんいるの?とマネージャーさんはキョトンとしておった。
――――――――…
んじっ…
交代制でお昼休みの最中に、お弁当を食べながら真依は一冊の漫画を真剣に読んでいた。
(ああ〜、屡薇くんの牙……かっこよかったなあ……)
漫画のジャンルは無論ボーイズラブで、攻めがヴァンパイアで受けが人間となっている。
そして真依はそのふたりを、屡薇と自分に当てはめて妄想してしまっていた。
お弁当を食べる速度よりページをめくる速度のほうがはやいと思われる。
(いっそ咬まれたいなんて言ったら……引かれるかな?)
真依は本心では、彼の牙に興味津々で、痛いだろうが咬まれてみたくて仕方がない。
(できることなら、あたしから言い出すんじゃなくて屡薇くんが衝動的に咬んでくれるのがいいんだけど……)
と、さらに希望のシチュエーションへ思いを馳せると、あの夜見せてくれた鋭い牙が無性に恋しくなって、
「はぁ……屡薇くん、あたしのこと獣のように咬んでくれないかなあ……」
真依はため息混じりに、呟いてしまった。
「って、やばっ!休憩時間終わっちゃう!」
妄想に励んでいると時間が経つのも忘れていたようで、時計に目をやり我に返った真依は急いでお弁当を食べ始めたのだった。
リハーサルに戻った屡薇は、もしかしたらくしゃみをしちゃっていたかもしれません。
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