※※第189話:Make Love(&Make Love!).10.5







 「あ……」
 薄明かりのなかで、彼の口元には鋭い牙が光っていた。
 その存在感は、鮮やかな金髪より圧倒的だ。

 「えっ?なにこれ?よくできてるね?いつの間につけたの?」
 まさか演出かと、それにしてはよくできているなと、真依は屡薇の口元をまじまじと見つめている。

 「いやこれ、本物……」
 屡薇はとても気まずそうに、彼女から視線を逸らした。
 「ほんもの…?」
 ますますわけがわからなくなった真依は、キョトンと彼を見る。






 「ごめん……じつは俺、ヴァンパイアと人間のハーフなんだ…」
 やがて屡薇は切々と、告白を始めた。
 「えぇぇぇぇええ…?」
 真依は真剣に耳を傾けながら、驚きを隠せないでいる。


 「黙ってて…ごめんね?いつか話そうとは思ってたんだけど……真依さんの首筋があんまりにも、美味しそうだったから…いきなり、こんな……」
 そして、“美味しそうだった”をこわく思うこともなく、ときめいてしまったあとに、

 「こんな俺でも……愛してくれる?」

 潤んだ瞳で確かめられた真依は、思わず後ろにぶっ倒れるかと思った。




 (いっ、今のは可愛かった!)
 なんじゃこりゃ!と思って見ると、屡薇が子犬に見えてくる。

 「ねぇ、真依さん……」
 消え入りそうな声も、キュンキュンと鳴く子犬のようだ。
 その姿はさながら、豆柴の子犬……と言いたいところだが、どちらかと言えば毛色からしてゴールデンレトリーバーの子犬である。




 「と、とりあえず、あたしがくさいとかじゃなかったんなら、いい!」
 赤面した真依は、コホンとひとつ咳払いをしてから、堂々として言いました。

 「てか、ばかにしないでくれる!?あたし屡薇くんのことずっと好きだったんだけど!?そんなことで嫌いになるわけないじゃん!」




 ……むしろなんだか危なっかしくて惚れ直してます!

 もっと素直に言うとここまで続きます。






 「よかった……」
 安心して笑った屡薇の口元では、その安堵により牙は引っ込んだ模様で、

 「ほんとに本物なんだね、あたしべつに噛んでもらってもよかったんだけど。」
 「いやあの、真依さ…」

 感心した真依は思わず、彼の歯をゆびでつんつんしてしまった。





 「わぁぁぁぁあ!何やってんの!あたしぃぃい!」
 真っ赤になった真依は自ら、布団へと後ずさる。

 その拍子に、

 ぱらり…

 浴衣はかたほう、肩から滑り落ちた。

 「あ…っ、」
 乳房が零れ出てしまい、焦った真依は戻そうと試みる。


 その手を掴んで、戻させまいとすると、

 「続き、しよっか…」

 屡薇は彼女へとにじり寄った。

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