※※第188話:Make Love(&Make Love!).10








 「やべ…!」
 とっさのことで、屡薇はまず真依をかばい、肩を抱いて隠すようにして逃げ出す。

 「今日のライブかっこよすぎました〜!」
 「そいつはどうも!」
 女の子たちはミーハー精神全開で、黄色い悲鳴を上げながら追いかけてくる。
 ここ一応、高級な老舗旅館なのに。



 「るっ、屡薇くん…!?」
 こんな事態は初めてだし、何がなんだかもうわからないが不謹慎にもドキドキしまくりで、真依は思わず彼の名を呼んでしまった。
 ぎゅっとしがみついたゆびさきまで、ドキドキしている。










 「あれぇ…?いま、フウちゃんの声がしましたぁ……」
 真依の声が聞こえたナナは、酔っているなかでもむくりと躰を起こした。
 薔はかなりムッとなる。
 周りはなんだか見ているだけでもう面白い。


 「フウちゃん、困ってるんれすかね…?」
 火照った顔のナナは浴衣姿で、部屋の入り口へと這って行こうとしているため、

 「おまえは行くんじゃねぇよ。」

 グイッ――――…

 強引に引き戻し、薔と豆が救出へと向かった。
 花子はさりげなく、引き戻されたナナの浴衣を整えてくれている。









 女の子たちから逃げ惑っていた屡薇は、いきなり傍らの部屋の中から腕を掴まれ引っ張られていた。
 肩を強く抱かれていた真依も、一緒に部屋の中へと。



 引き戸がピシャリと閉められ、顔を上げた屡薇と真依は、

 「薔ちゃん!豆ーっ!」
 「先輩…!」

 互いにちょっと違うほうを見ながら感動の声を上げた。

 “わーい!ぼくのごしゅじんさまだ!”
 豆は屡薇の周りで、尻尾をぴこぴこはしゃいでいる。


 「その節はどうもぉぉ。」
 大先輩ことこけしちゃんは、真依に向かってぺこぉりと頭を下げる。

 (何の先輩なのだろう?)
 と、醐留権は思った。


 「あれ?あの人……」
 「なになに?また羚亜くん、感動の再会!?」
 真依に見覚えがある羚亜は息を呑んで記憶を探り、愛羅は今度はどんな感動が待ち受けているのかと瞳を輝かせる。






 そんななか、

 「屡薇くーん!出てきてよ!」
 「誰と来てるの!?」

 ドアの外で、女の子たちが騒ぎ始めたのである。

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