※※第188話:Make Love(&Make Love!).10








 「ん……」
 美味しくご馳走を戴いている最中に、とてつもない苦味のあと眠気に襲われ眠ってしまったナナは、トロンとした目つきでおもむろに目を覚ました。
 なんだかいい匂いがしているうえに心地よくて、全身はやけに火照りを感じている。

 「おはよう…」
 ずっと膝枕をしてあげていた薔は、彼女を見下ろしながら、ゆびの背で頬を撫でると少し悪戯っぽく微笑んだ。



 その瞬間、

 「んああ…っ、薔ぅ…っ!」

 めちゃくちゃ甘えた声を上げたナナさんは、彼へとむぎゅっと抱きついてきたのだ。

 「もっとなでなで、してくらさいっ…!」







 「……あ?」
 この状況下でのこの返しは、彼のちょっとした動揺と捉えていただきたい。
 「んんん……薔ぅっ……」
 ナナはまるでゴロゴロと喉を鳴らしているかのように、夢中になって彼氏へとすり寄ってくる。


 無論この部屋にはふたりきりではないため、こけしちゃんと愛羅は見習いたい衝動に駆られ、醐留権と羚亜は何かしらのデジャヴを感じている。




 「見んなよ?」
 周りに厳しく言い聞かせた薔はナナのあたまをやさしく撫でながら、浴衣を整え覗いていた彼女の素足を隠す。

 どうやら、ナナは夕食の最中ふとした拍子に、地酒を水と勘違いして飲んでしまったようである。















 ――――――――…

 登紀子叔母さんが学生時代卓球部に所属していたこともあり、こちらの旅館には昔懐かしい卓球台が用意されていた。
 葛篭とハリーは、酔い覚ましがてらイチャイチャとラリーに没頭している。





 「あたしね、明日はここのほうとうを食べたいと思って。あと屡薇くんて、正しい信玄餅の食べ方知ってる?」
 「すっげえ美味そうだね、移動がなければ俺も一緒に行きたかったな。あの、包み紙に中身を出して食べるやつでしょ?あれってじつは、正しい食べ方ってわけじゃなくて番外編の食べ方なんだよ?」
 「えっ!?そうなの!?」
 「そうそう。信玄餅って、何通りか食べ方が紹介されてるんだ。自分にとって食べやすい食べ方で食べるのが一番だよ。」
 ガイドブックを手に明日の予定などを嬉しそうに話す真依を屡薇が笑顔で眺めながら、ふたりは寄り添って部屋までの廊下を歩いていた。
 明るすぎない明かりは品がよく、木の廊下はよく磨かれているのに足下へそっと馴染むようでとても歩きやすい。


 「すごいね、屡薇くんて意外と物知りなんだ!」
 彼と歩きながらはしゃいでいた真依は、ふと、はっとして思った。

 (ちょっと、あたし!何やってんの!これじゃまるでラブラブカップルみたいじゃん!)







 ……正真正銘のラブラブカップルですけど。


 「真依さん?どうしたの?」
 赤面し口をあんぐりと開けてしまった彼女の様子に、キョトンとした屡薇が問いかけてくる。

 「ギッ、ギター弾いてる時はあんなに振り乱れてるのに…!」
 「よくわかんないけど、褒めてるの?照れくさいの?」
 イチャこらしていたことに気づいた真依は、必死で照れ隠し。


 そのとき、

 「ねぇ、あれ、屡薇じゃない?」
 「きゃあ!ほんとだ!」

 おそらく、ライブ観戦を終えてこの旅館にやってきたファンの子に、目撃されてしまったのだ。

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