※※第188話:Make Love(&Make Love!).10








 仲居さんが食器を下げる頃には、浴衣姿のナナはすやすやと眠ってしまっていた。
 しかも、薔に膝枕をしてもらい、頭を撫でられながら。

 (いいなぁぁ…)
 代表してこけしちゃんにいたしましたが、惚れ惚れする仲居さんたちもそう思いながら部屋を後にし、他の乙女たちも彼氏に膝枕をしてもらいたい様子だ。
 しかしながら、なかなかうまい具合に眠気はやって来ない。


 「ちょぉっと残念だけどぉ、ゾーラ先生ぇは羚亜くぅんとお風呂入ってきたらぁぁ?」
 よってこけしちゃんはニコニコと、彼氏に男と男湯を勧めてみた。
 「いや、桜葉……じつはこの部屋にも、露天風呂が……」
 ゾーラ先生はやはり、ニコニコと男同士でしっぽりを勧めてくる彼女と一緒にお風呂へ入りたいらしい。


 「すみません、ちょっとハリーさんと一緒に、酔い覚ましに行ってきます。」
 「HAHAHA〜!」
 そのうちに、ほろ酔い気分の葛篭は酔っぱらいの彼氏を連れて、共に部屋を出て行った。




 「羚亜くんが浴衣になったら、可愛すぎてすぐに脱がしたくなっちゃうかも〜!」
 「ええ!?」
 愛羅は輝く瞳で彼氏を狙い始め、真っ赤になった羚亜は身の危険を感じ始める。

 まったりとした時間は、流れていきます。
















 ――――――――…

 (かなり奮発しちゃったけど、もうちょっと安い旅館にしておけば良かったかな……余計に緊張する……)
 ライブ観戦を終えた真依は、未だ興奮冷めやらぬまま赤い木橋を渡っていた。
 橋の下を流れる川の水は、夜の中でも底を見渡せるくらいに澄んでいる。

 ライブハウスからここまでは、電車でひと駅と徒歩で10分ほどかかった。


 (えーと、明日は頼まれた信玄餅を買って、本場のほうとうを食べて……)
 と、明日の日程に思いを馳せ、ガイドブックへ真剣に目を通しながら橋の上を歩いていた真依は、

 「だーれだ?」

 突然後ろから、右手で右目を左手で左目を覆われていた。





 「………………!」
 びっくり仰天してしまった真依は、反射的にガイドブックを落としてしまってから、叫んだ。

 「知らない!何このちょっと爽やかな演出!」
 「真依さん、その言い方ならちゃんと俺だってわかってるじゃん。」
 真依があからさまに慌てふためいたため、屡薇は笑いながら手を離しガイドブックを拾い上げ、砂などを手で払ってから彼女へと手渡した。
 真依は小さな声で、彼から視線を逸らしつつ礼を述べる。


 「早く会いたかったから、裏ルートでこっそり抜けてきちゃった。」
 出待ちに気づかれそうになりながらも、屡薇は早々にタクシーでここまで駆けつけた。
 他のメンバーもこっそりと、宿泊するホテルに向かった模様である。

 「てか、早く部屋行くよ!」
 「それって誘ってんの?」
 「誘ってない!」
 屡薇は真依をからかい、自分だって早く会いたかったくせに真依はちっとも素直になれない。
 だけど、橋を渡りきる手前で手を繋がれ、赤面しながらも懸命に不本意を装い大人しく彼の隣を歩いて行った。

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