※※第187話:Make Love(&Ride).109
新幹線の指定席で、真依はドキドキしていた。
景色を眺めて心を落ち着かせようにも、どうしても夜へと想いを馳せてしまう。
(今夜は山梨にお泊まり…!有休取れて良かった!)
心でガッツポーズの真依はFeaRのライブを観に行くこととなっており、しかもその後は、予約した宿まで屡薇がわざわざ会いに来てくれるようなのだ。
久しぶりに会えると思うと、胸は否応なしに高鳴ってしまう。
落ち着かせようと意気込むほどに、さらにドキドキしていることに気づかされ、
(そうだ!こういうときは、大先輩を見習ってBLで心を落ち着かせよう!)
ニコニコおっとりな大先輩が勧めてくれた腐的な漫画を、真依はバッグから取り出した。
(そうそう、あの子屡薇くんよりかっこよかったし、大丈夫だよ!あたし!)
必死になって、心へ言い聞かせると、
(あああ、やっぱりいいなあ、ボーイズラブ…)
めくるめく禁断の世界へと、真依は誘われてゆく。
ゴールデンウィークということもあり相席となっていたが、
(その漫画、私も持ってるよ…!)
偶然にも、隣の女性も腐女子のようで、住みやすい世の中になったもんだなぁぁと言うのはもちろんこけし姉さんの意見でございます。
――――――――…
「……おや?」
メガホンで指示を出す勇敢な彼女に見とれていた醐留権は、ふと、辺りを見回した。
「ゾーラ先生ぇ?どうしたのぉぉ?」
いったん指示を止めたこけしちゃんはニコニコと、彼を見上げ、
「暮中と三咲の姿が、見当たらないんだが……」
「あぁぁ、ほんとだぁ、ナナちゃぁんがさらわれちゃったぁぁ。」
一緒になって辺りを、見回している。
葛篭は震えるハリーへと熱き声援を送り、バカップルとわんこたちは協力して、近場に山菜を探し始めたようで、
「そういえば、暮中に車の鍵を預けてあったな…」
「ゾーラ先生ぇ、なにそのあつぅぅい信頼ぃぃ…」
醐留権は悟り、こけしちゃんは萌え。
「とりあえずぅ、アイロン掛けるのはいっぱいあるからぁぁ。」
「次はもう少し、危ない場所にしてみようか。」
「そうねぇぇ。」
そのうちにふたりも、ハリーを弄ることにいささかの快感を覚え始めたようだ。
これぞエクストリームアイロニングの醍醐味(ではない)。
日は高く昇りゆくが、木陰となっているためここは涼しくて、こけしちゃんと醐留権は次にアイロンを掛ける衣服へ念入りに皺をつけたりしていた。
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