※※第187話:Make Love(&Ride).109








 気を取り直して、特訓開始です!
 ※良い子から極悪人まで、みんな真似してはいけないパターンのやつです。



 ポキッ…

 「ひぃぃぃいイイ…!」

 足下の小枝を踏んだだけで心が折れそうになるハリーの目前、

 「ハリーさぁぁん、アイロン掛けはぁぁ、まずは霧吹きを使ってぇ、全体を湿らせてくださいねぇぇ?」

 メガホンを手にしたこけしちゃんが、アイロンの掛け方をニコニコと説明している(お師匠さまはどうした?)。


 「桜葉はほんとうに、家庭的な女性だな…」
 眼鏡に木漏れ日を反射し、惚れ惚れとするゾーラ先生は未来に安泰。

 「あたしも参考にしよう!」
 「愛羅さん…!」
 意気込み始めた彼女に、羚亜は感動である。

 「ハリーさん!素敵です!」
 もしやSっ気でもあるのか、だいぶ崖っぷちに立たされた彼の姿に葛篭はキュンキュンしちゃっている。








 「あっ!蝶々さんが飛んでました!」
 ナナは小さな、モンシロチョウを発見した。
 「可愛いですね〜!」
 「あぁ、可愛いな。」
 どうやらお師匠さまこと薔は、エクストリームアイロニングそっちのけではしゃぐ彼女を眺めているようだ。

 “豆くん、勝手にはぐれちゃダメよ?”
 “はーい!”
 豆はちゃんと、花子のあとをついて回っている。


 「余裕のお師匠さまです。」
 「おい、勝手に映すんじゃねぇよ。」
 何の指導もしていないにも拘わらず、葛篭は彼女とイチャつく薔を撮影している。



 かなりへっぴり腰となったハリーは、

 「悪霊ッ…、たいサーン…!」

 何とか霧吹きで、葛篭のブラウスを湿らせてゆく。



 「声が小せぇよ、いつもの喧しさはどこ行っちまったんだ?」
 するとようやく、お師匠さまも再び指示を出してくれたため、

 「悪霊ッ、たいサ――――――――ン!」

 恐怖に任せて叫んだハリーだが、全身にえもいわれぬ力がみなぎるのを感じた。
 同時に、これからは崖っぷちに立たされた悪霊にもちょっと優しくしてあげヨウと、そんな優しい気持ちが鼻おじさんのなかには芽生えていた。



 そしてふと、

 (ブドウって、ここらへんでも食べられるのかな…?)
 辞書のその部分を思い出したナナは、キョロキョロと葡萄の姿を探し始めた。

 「どうした?」
 彼女の様子に、薔はやさしく問いかけたのだけど、

 「ブドウを探してるんですけど…」

 この答えには笑いを堪えるしかなかったようです。





 ハリーがプルプルとふるえる手で、ブラウスにアイロンを掛け出したところで、

 「向こうに探しに行こっか、」
 「はいっ!」
 「こら、静かについてこいよ。」
 「はい…!」

 薔はナナを連れ出すことに成功した模様です!



 “ウフフフフ…”
 豆にじゃれつかれている花子は、いつでもご主人さまの味方なので見て見ぬフリをした。

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