※※第165話:Make Love(&Shame).93







 バタン――――…

 やがて、帰宅だ!



 “花子ちゃん、ぼくねむくなってきちゃった…”
 “一緒にお昼寝する?”
 “するっ…”
 わんこたちはこの頃、ちょっと遅めのお昼寝タイムに突入した模様で、

 「や、やっぱり、濡れちゃったじゃないですか…」

 帰ったら只じゃ置かれないはずのナナは、ドキドキしながらハンカチで彼の肩を拭おうとした。


 すると、

 グイッ――――…

 いきなり、その手を掴まれてしまい。


 「すぐに脱ぐから構うなよ…」
 薔は笑って、耳もと囁く。

 きゅっ…

 「は、はい…」

 期待も高まり、ハンカチを握ったナナは素直に応え、

 ふたりはリビングへと向かっていった。









 バサッ――…

 薔は無造作に、ブレザーを脱ぎ捨てる。

 ハンカチをテーブルへと置き、ナナは思った以上に濡れてはいなかったブレザーのボタンへと手を掛けたのだけど、

 ぐいっ

 脱ぐまえにちょっと強引に、くちびるを奪われてしまった。

 チュ――――…





 「ん…っ、」
 やわらかくくちびるとくちびるが触れあい、ナナは甘く声を漏らす。
 ブレザーから離した手で、思わず彼のシャツを掴む。


 ちゅっ…ちゅ…

 雨の音も届かないほどに、やさしいリップ音がほのかに暗い部屋へと響き、

 「……っ、は…っ、」

 視線を絡めながら吐息を溢した隙に、舌はゆっくりと滑り込んできた。

 …ッ…ちゅくっ…

 「んんんっ…っ、」





 今度は、舌と舌が音を立てて絡まる。
 そっと動いて上顎を這って、吸いつくみたいに呼吸すら忘れて。


 しなやかに、髪を撫でられてゆく。

 「…――――――っん…」

 ガクンッ…

 不意に、ナナの腰は砕け、

 ぎゅっ

 と、支えるように抱いた薔は彼女をソファに横たえた。



 ギッ…

 ソファが軋む。

 「ん…っ、ぅ…んっ、」
 乱れた髪へ、ゆびが伝う。
 いったん深く入れられた舌が、舌を撫でながら抜かれてゆく。

 ナナも無我夢中で、舌を伸ばす。
 ビクビクと躰はふるえてしまい、もはや頭のなかは真っ白状態にされており。
 靴下を履いたまま、伸ばしたつまさきをソファに立てる。


 「……っはぁ…っ、」
 やがてくちびるが離されてゆくと、彼女の表情はとろけてしまっていて、

 「おまえだって、濡れてんだろ?」

 意地悪く笑った薔は、いやらしい手つきで肩を撫でてきた。

 「傘じゃどうにもならねぇとこが…」





 「あ…っ、」
 彼の言葉通りで、このままエッチかとナナはひどく昂ったのだけど、薔は躰を起こしてしまったのだった。

 「そういやおまえ、腹減ってんだよな?」

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