※※第186話:Make Love(&Spume).108








 (あっ!コモチ先生の新刊出てる!)
 近所のSUTAYA(誠に御免)にて、真依はBLコーナーでドキドキと一冊の漫画を眺めていた。

 (う〜、屡薇くんのせいで毎月のBL代がばかにならないよ…)
 と、心にて彼氏を責めながらその漫画へ手を伸ばすと、

 「あ、」
 「あぁぁ、」

 隣から同じ漫画へ手を伸ばした女の子と、ゆびさきを触れあわせてしまった。


 「ごめんなさい!」
 「失礼いたしましたぁぁ。」
 ふたりは同時に手を離した。
 これが男女なら、否互いに彼氏持ちじゃなかったのならか?とにかく恋愛に発展もしかねないシチュエーションである。

 「お先にどうぞ?」
 どう見ても相手は高校生くらいだったため、大人発揮で微笑んだ真依はさりげなく譲ってみた。

 「あたしはすでに一冊持ってるのでぇ、大丈夫ですぅ、お姉さぁんがお先にどうぞぉぉ?」
 にっこにこのその女の子は、腐に於いては遥かに先をゆく台詞で譲り返してくれた。



 (なんかこの子可愛いうえに、たぶん大先輩だわ!)
 悟った真依は興奮気味に、コモチ先生の新刊を手に取った。

 「じゃあ、お言葉に甘えて…」






 真依が上から二番目を取るのを見届けた後、女の子もじつにおっとりとした動作で上から二番目(真依から見れば三番目)の一冊を引き抜いた。

 (ですよね!)
 (ですよねぇぇ。)
 ふたりは視線で、熱き腐の魂を合わせる。



 「最高ですよね、コモチ先生……あたし最近ヘタレ攻めが、特に好きで……」
 大先輩に心を許した真依の口からは、自然と腐的な言葉が紡がれてゆく。
 「でしたらこれもぉ、オススメですよぉぉ?読んだことありますぅぅ?」
 女の子はにっこにこが止まらない様子で、別の漫画家さんの作品を紹介してくれた。

 「ないです!買ってみます!」
 真依はすぐにその一冊も、手に取り、

 「ではぁ、素敵なBLライフをぉぉ。」

 女の子はニコニコおっとりと会釈をすると、もう一冊、攻めが眼鏡の作品を手にしてからレジへと向かっていきました。







 「……かっこいいな、あの子……屡薇くんよりかっこいいよ…」
 真依は惚れ惚れと、その後ろ姿を見送っている。
 呟きは照れ隠しと取っておこうか。

 「うんぅ、ゾーラ先生ぇのお誕生日プレゼントにぃ、さりげなくBL入れとこうかなぁぁ。」
 それならやぁっぱり攻めは眼鏡よねぇぇ……とか考えながら、こけしちゃんはレジへと並んだ。
 ちなみに、一緒に来たこけしちゃんズママと司はヒーローコーナーにてウハウハ中(司はヒーローに、ママはイケメンに)。




 屡薇とゾーラ先生はこの頃、もしかしたらくしゃみでもしちゃっていたかもしれません。

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