※※第186話:Make Love(&Spume).108







 「大丈夫ですかーっ!?」
 すぐさまアイロン掛けはほっぽって、ナナはキッチンへと掛けつけた。
 ハリーはまた存在を忘れられている感が否めなくなる。



 「はやくっ、絆創膏をっ…!」
 彼のゆびを見たとたん、青ざめ慌てふためいたナナは救急箱を取りに行こうとした。


 ところが、

 グイッ――――…

 その腕を掴んで、強引に引き留めると、

 「何言ってんだ?絆創膏なんいらねぇだろ、」

 薔は彼女を抱き寄せる。


 するとナナはたちまち、耳まで真っ赤となり、

 “そろそろ帰ったほうがいいわよ?鼻おじさん、”
 という視線を、凛とする花子はハリーへと投げ掛けてみた。


 “そのようデスネ。”
 胡散臭くもキリリとした目配せで返したハリーは、気を利かせてアイロンの電気を切ってから、そのキリリとした表情のままリビングを出て行きました。

 “でハ、マサの娘サンの旦那サン、ワタクシまたお邪魔いたしマス。”
 と、薔に目配せで挨拶をして。









 「もう、ほんと……気をつけてくださいよ……」
 「こっから見えるおまえが可愛すぎんのが悪い。」
 「えええ!?」
 しかしながら薔は、まったくもって見てはおりませんでした。
 ハリーは気にせず、陽気に帰って行きましたが。


 雰囲気はとたんに甘くなり、彼はゆびから血を流しているというのにナナの心臓も甘く脈を打ち始める。

 「責任持って、治してくれんだろ?」
 ちょっと意地悪い微笑と共に、薔は赤く染まったゆびさきを彼女の口許へと持っていった。

 「は……はい……」
 小さく返したナナのくちびるに、ゆびさきが触れればそれは血液の紅となる。


 クプッ――…

 やがてナナはおもむろに、彼のゆびを口へと含んでいきました。

 「ん……」









 ジュッ…チュプッ…

 口内から浸透してゆく血の味は、何とも甘美でゾクゾクしてしまった。
 それでもやはり、赤の興奮は白の興奮を上回ることができない。
 想いを馳せることで、ナナの躰は昂る。

 「いつ見てもほんと、卑猥なねぶり方だな…」
 くすっと笑った薔は、彼女の口内を愛撫するようにゆっくりとゆびを動かす。


 ヌクッ…グチュッ――…

 「ん…っ、ん……」

 ナナはそっと彼の手を持って、夢中になって吸いついている。
 くちびるの赤を絡めてから、ゆびはやや深くへと滑り込まされ、抜かれながらまた赤を絡める。



 見て見ぬふりのわんこたちは、リビングにて寄り添いウトウトしている。

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