※※第165話:Make Love(&Shame).93
下校時刻になると、雨は先ほど気づいたときよりも強さを増していた。
「わたし、お腹空いちゃいましたよ!」
正面玄関にて正直に明かしたナナは、かろうじて持参した傘を広げようとしたのだけど、
「おい、」
ひょいっ
その傘は奪い取られてしまった。
「二人で帰るんだから傘は一つでいいだろ。」
「はっ、はいっ…!」
真っ赤になって頷いたナナは、素直に彼と一緒の傘へと入り、
(羨ましすぎる…)
見かけちゃった周りは惚れ惚れと見送っている。
そんななか、
「あっ、でも、薔の肩が濡れちゃいますんで、やっぱり傘は2つのほうが…」
そう気づいたナナは、控えめに提案してみた。
そのときちょうど、二人共傘を忘れたのだろうか濡れながら歩いている女の子たちがおり、
「これ使っていいぞ?」
「えっ?…って、ぎゃああああああああ…!?」
ナナの傘は、大赤面し慌てふためいてるなんてもんじゃないその子たちの手へと。
ナナは呆気にとられ、
「俺のナナの傘だ、ちゃんと返せよ?」
「ああありがとうございます!かしこまりました!」
言い聞かせられた女の子たちは濡れたまま最敬礼した。
「もっとくっつきゃいいだろ。」
「あっ、は、はい…」
よって、ナナはもうどうやっても、手を繋いだ彼にかなりくっつくしかなくなって、
「はぁ〜、傘忘れてみるもんだね…」
「そうだね…」
濡れながら見送る女の子たちは、至極うっとり。
(優しさのおすそわけ…)
おそらく、ただ彼女に相合い傘で密着するしかできなくさせたかっただけの話だとは思いますが、周りはうまい具合にこんな勘違いでございます。
――――――――…
水溜まりに落ちる雨粒が、いくつもの波紋を作ってゆく。
ドキドキ…
春先の雨はあたたかいと言えども、まだ少し手は冷たくなるためか、繋いだ手と手は彼のブレザーのポケットに入れられちゃっていた。
甘い匂いと体温は自然と、心地よく伝わってきます。
「来週はいよいよ、花子ちゃんのお誕生日ですね!」
「そうだな、」
ドッキドキのなか、ナナが元気よく彼とお話していると、
「OH〜!これハ〜、マサの娘さんト〜、マサの娘さんの旦那さんではあーりマセンカ〜!」
突然、ロマンチックをぶち壊すかのような胡散臭い声を背後より掛けられていた。
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