※※第183話:Make Love(&Vehemence).106








 すやすやと花子と豆は、寄り添って眠っている。
 明日は写真撮影に駆り出されることもあるし、しっかり休んでおかないとね。







 ドキドキドキドキ…

 ナナは胸を高鳴らせながら、寝室にてお着替えをしていた。
 着用するように手渡されたのは、送られてきた髪飾りとニーソと、例の美咲のミディアムドレスである。

 「うううっ…、ここまでしか上がらないよぉ……」
 背中のファスナーは上げられるところまで上げたのだが、あとは彼にやってもらうしかなく、

 「うう〜ん、長い靴下だな……履きにくい……」

 ベッドに座って、ニーソを履いてゆく。
 膝より上まで丈があるため、いささか手こずりました。



 「えっと…、これはここらへんでいいのかな…?」
 ニーソを履いたあとには、クローゼット裏扉の姿見の前で、あたまの左側に髪飾りをつけてみた。

 「ヘンじゃないかなぁ…?」
 ファスナーは完全ではないが、鏡の前でくるりと回っておかしなところはないかとナナが確認していると、

 「おい、ナナ、準備はできたか?」

 リビングでの着替えを終えた薔が、寝室のドアを開けて中を覗いたのだ。




 (きゃあぁぁぁぁあああああ…!)
 彼の姿に、一瞬で見惚れたナナは真っ赤っかとなり、

 バタンッ――――…

 「あれっ!?薔っ!?」

 彼はすぐにまた、ドアを閉めてしまった。



 「あのっ、どうなさったんですか!?やっぱりわたし、ヘンでしたか!?」
 ドアへと駆け寄り、ナナが声を駆けると、

 「ばか、そうじゃねぇよ…」

 ドアの外で、薔は照れくさそうに告げたのだった。

 「おまえが可愛すぎてびっくりしただけだ……」






 ぼぼっと耳まで赤くなったナナは、ドキドキとベッドまで後退る。

 「あー、ったく、心臓に悪りぃな…」
 ちょっと頬がまだ赤い気もするが、薔は堂々とドアを開ける。




 「どっちがですかーっ!?」
 「あ?」

 ベッドに座って仰け反る勢いで、ナナは声を張り上げた。
 彼女の目の前で、彼はスマートに燕尾服を着こなしどう見ても彼女専属の執事になっちゃっておりますので。


 声を張り上げた瞬間に、背中が少しスースーすることに気づいたナナさんは、

 「あっ、あの……」

 もじもじと彼へと、申し出た。

 「すみません…、これ、背中……閉めてください……」

 と。





 すると、

 「そうじゃねぇだろ?」

 とたんに妖しげな雰囲気を纏い、笑った薔は彼女を見下ろした。

 「言い出したのはおまえだからな、主なら主らしく振る舞えよ?……お嬢様、」

[ 288/537 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る