※※第183話:Make Love(&Vehemence).106








 インターホンを鳴らしたのは、なんだか陽気なシロトラオオワの宅急便(何となくごめん)のおじちゃんだった。
 これからベッドに向かうところだったが、荷物の送り主は夕月(※頼まれたのは如月だと思われるが)だったため薔は不機嫌にはなりませんでした。



 「何を送ってきてくださったんですかね?」
 わりと大きな箱の中にはいくつかのプレゼントが入っていた。
 丁寧にラッピングされたそれらの中身に、様々な思いを馳せながらナナがワクワクしていると、

 「……なんだ?これ……」

 まず、比較的小さなふたつにはわんちゃん用の衣装が入っていたのである。



 「うわーっ!可愛いですねーっ!」
 と、ナナが手にして眺めているのは、豆柴用の殿様の衣装。
 「………………。」
 薔が黙って眺めているのは、レトリーバー用のお姫様の衣装。


 ダンディーな夕月もなかなか、お茶目なことをするもので、わんこたちの可愛らしい衣装の下にはシンプルなカードと、さらなるプレゼントが入っていた。

 「夕月さんて時々本気で、何考えてんのかわかんねぇな…」








 カードには、先日の食事会の礼だと言う内容がただ、きれいな字体で書かれているだけだった。


 そんでもって、

 「ほわぁぁぁぁぁぁあああ!?」

 一番大きな包みを開けてみたナナは、中に入っていた衣装というかコスプレなのかに、大興奮して声を張り上げたのだ。

 「薔っ!こちら、今すぐ着てみてください!」





 昂る彼女が手にし、眺めているのは、

 立派な、燕尾服でした。
 スマートな黒ね、ベストの基調はグレーだけど。


 「やだ。」
 即答した薔は、一番下に入っていたプレゼントを開封しだす。

 「なぜにですかーっ!?」
 是が非でも着てほしいナナは、やだ返しにときめきながら身を乗り出す。

 「俺に似合うわけねぇだろ。」
 きっぱりと返した薔は、そのプレゼントの中身を取り出した。


 「絶対に似合います!薔はご主人さまですけど、こちらだってもんのすんごく似合いますよ!」
 力説する、ナナの前、

 「………………。」

 彼は黙って、黒く大きなリボンの髪飾りと、黒いニーソを眺めている。


 …………はわっ!
 そちらももんのすんごく似合いそうですけど!

 と思ったナナだったが、何となく口にはせずにおいた。



 無論、髪飾りとニーソは、以前に贈られたドレスに合わせるためのアイテムで、

 「そういえば、今夜は、ご褒美くださるんですよね!?」

 萌えるナナは元気よく、言葉にしてみた。









 「そうだったな…」
 髪飾りとニーソが入っていたこともあり、薔は妖しく微笑んだのだった。

 「悪くねぇかもしんねぇな?」

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