※※第183話:Make Love(&Vehemence).106







 「ばちが当たりますよ――――――っ!?」
 「だから見んなっつってんだろ?」
 ナナはこれでもかというほど食いついた、真っ赤っかのまんま。
 すぐさまペンにキャップをし、撮影の準備をすべきか迷う。

 「ヘンな顔なんてあり得ませんよ!地球がひっくり返ってもあり得ないです!いいじゃないですか、ちょっとくらい見せてくださいよ!」
 形勢逆転か、愛ある未来を彷彿とさせる発言をした当人のナナが、未だ顔を上げないでいる彼の肩を揺さぶると、

 「………………。」

 薔は黙り込んだ。


 「ど、どうなさったんですか?」
 調子に乗りすぎたかと、恐る恐るナナは尋ねてみる。

 「……死んだふりだ。」
 落ち着こうとしているのか、薔は低い声で応える。




 か〜わ〜いいじゃないの――――――――――っ!

 おーっ、ぉーっ…(※萌えは時空を越えて…なエコー)





 「でででしたら、わたしはクマちゃんにでもなりますか!?」
 「おまえには無理だろ。」
 「えーっ!?」
 彼が死んだふりをしているのなら、自分は熊にでもなろうとナナは直感的に閃いたようだ。
 それだといったい何のプレイだ?


 「わたしだって、クマちゃんにくらいなれますよ!」
 意気込み、熊の真似をしようと試みたナナだったが、はちみつを壺からすくって舐めているようなほのぼのとした姿しか思い浮かばなかったため、

 「……が、がおーっ!」

 控えめに両手を挙げ、主成分は勝手なイメージで熊の真似をしてみた。



 「………………。」
 渾身の“おそらく熊”を演じた彼女へ向いて、しっかり眺めていた薔だがまだ死んだふりをつづけているのか無言。
 ナナはなかなか、挙げた両手を下ろせなくなる。


 「すみません…、何か言ってくださいませんと、すんごい恥ずかしいんですけど……」
 「そんな襲いたくなるほど可愛いクマはいねぇよ、もう一回やってみろ。」
 「えええ!?」

 さりげなくアンコールが。



 「もっ、もうできませんよ!」
 ようやく両手を下ろすことができたナナは、素早く前を向いて再びペンを取った。

 「続きを、書きます!」






 すると、

 ちゅっ…

 ほっぺたにやさしくキスをされちゃったのだ。


 やわらかく、ほおとくちびるは触れあい、離されても感触は消えずに熱を伝えてゆく。


 ペンを持ったまま火照るナナは、微動だにできなくなり、

 「…――ったく、かわいすぎなんだよ…」

 くちびるを少し離すと、ゆびの背で彼女の髪を揺らして薔は囁く。




 そして彼はそっと、頬から離したくちびるを耳もとへ寄せると、

 「なぁ、ナナ…」

 甘い声で、吹きかけてきた。

 「それ…ちゃんと書き終えたら、エッチなことしような?」








 触れた吐息が気持ちよくて、ふるえてしまったナナは素直に小さく頷いた。

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