※※第182話:Make Love(&Oral tradition).105








 「ん……っ、」
 またひとつ苺を口移しで味わっていた。
 果肉に、歯を立てる瞬間、じゅぷりと果汁が溢れだす音すらも卑猥に感じている。

 刺激的に互いの口内へと広がるそれは、魅惑的なフルーツジュースで、

 …ッ…くちゅっ…

 僅かに、やわらかく舌先が触れあっていやらしく音が響く。



 「は…っ、あ…っ、」
 くちびるを離してゆくと、瞳を潤ませたナナは息をかなり乱してしまっていた。
 彼へとしがみついて、下着をしきりに濡らしてゆく。

 「もうおしまいか?」
 やさしく背中を撫でて、薔はちょっと意地悪く確かめてくる。





 「まだ……ですっ……」
 エッチな気分は掻き立てられるばかりで、ナナはもうひとつ苺を手に取った。
 すると途中で、その苺は奪い取られ、薔が彼女の口へと咥えさせる。


 「ん……」
 苺を咥えたナナは、頬を火照らせ再び彼へと果実越しにくちづけた。
 ゆっくりと撫でられる髪が揺れて、気持ちよくて堪らない。

 また口内に広がる、甘酸っぱい果汁。
 僅かに舌先を触れあわせてから、くちびるを触れあわせながら果肉を咀嚼する。

 味わいたいのは苺か?それともキスなのか?


 「は……」
 時折触れあう熱い吐息。
 抱きしめられるだけで、腰は砕けてしまいそうで。






 ……ちゅぷっ……

 「あのっ……まだ……」

 少しだけ、くちびるを離して、ナナはまた苺へ手を伸ばそうとしたのだが、

 グイッ――――…

 それは叶わず、つよく抱きしめた薔は濃厚に舌を絡めてきた。



 「……ん…っ、」
 舌と舌が、やわらかく重なり、絡まる。
 吸いつくみたいに触れあわせたくちびるが、艶かしく動くたびに淫らな音が零れる。


 髪を撫でていた手は頬へと滑り、愛撫をしてから下唇を弾く。


 「んん…っ、」
 その弾かれた下唇は、舌を抜きながらやさしく吸われていって、

 「はぁ……っ、ン、」

 離されてからはまた、包み込むようにくちびるを吸われナナの躰はふるえた。




 「今夜はやけに大胆だよな…」
 ゆびの背でそうっと、頬を撫でた薔は彼女を甘く見つめていた。

 「おかげで俺はおまえのキスを、じっくり味わえたよ…」

 そして、妖しく微笑む。


 「だ…っ、だって…っ、」
 恥ずかしくて視線を逸らしたいのに、逸らすこともできずナナは小さく振り絞る。




 「だって……何?」
 くちびるへとくちびるを寄せ、薔は吐息に乗せて囁きかける。

 「あっ……」
 またすぐに重なりそうなくちびるで、触れるか触れないかの熱をなぞって、

 「ちゃんと聞かせて…」

 何もかもお見通しの彼は、妖美に彼女の愛欲を誘い出した。

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