※※第182話:Make Love(&Oral tradition).105








 「男の子…?」
 屡薇は急に声を張り上げた彼女の前、わけがわからずにたいそうポカーンとしておった。
 しかしポカーンとしながらもさりげなく、再び手にしたお弁当を完食しようと勤しみだした。


 「高校生くらいの子!華奢できれいで、BL漫画に出てくる受けの子みたいだった!あたし、ここまでの道聞かれたんだから!」
 赤面した真依は、俯いて彼とは視線を合わせようとせず、勢いに任せてつづける。

 「真依さん……いつの間に腐女子に……」
 「ぜんぶ屡薇くんのせいだよ!」
 屡薇は呟き、ここで顔を上げた真依は彼と視線を合わせてしまってから、プイッと逸らしてまた俯いた。

 ……そしてそれは何より嗜好のせいですよぉぉ?(By.こけし姉さん)





 「あのさ、真依さん…」
 修羅場の最中にもおかずを頬張りなかなか大きなお弁当箱を空にした屡薇は、事態をだいたい呑み込めてきたため呆れたように返しました。

 「俺、昨日はスタジオにこもってたから何も嘘言ってねぇし、隣ふたりとも高校生だから…友達とかなんじゃねぇの?」

 と。




 「あ、そうか。」
 真依はすんなり納得した。
 「俺のイメージってどんなんだよ…」
 かなりショックを受けた様子を装い、屡薇はソファに座ってうなだれる。


 「ごっ、ごめんね?ほんと、ごめん…」
 慌てながら、真依が必死に謝罪をすると、

 「もう真依さん、今度からちょっとでも不安になったら俺のブログとかツイッター、ちゃんとチェックしてね?これ命令だからね?」

 片手で髪をかき上げいささか険しい視線を送り、屡薇は言い聞かせてきたのである。

 「はい……」
 真依は縮こまり、素直に頷いていた。
 しばし、ふたりのあいだには無言の空気が流れる。
 屡薇はただ黙って、彼女を見つめてくる。



 「じゃ、じゃあ、解決したから、あたしはこれで…」
 なんか雰囲気が妖しいぞ!と思った真依は手を伸ばし、彼が平らげたお弁当箱を整え、帰り支度を始めようとした。


 ところが、屡薇はいきなりその手を強く掴んで引き留めたのだ。

 「ダメだよ、帰さない…」









 跳ねた心臓が、おかしな速度で鼓動を打ち始める。
 真依は微動だにできなくなる。

 「俺はこんなにも真依さんのことが好きなのに……また変な勘違いされても困るし、もう限界…このままじゃ俺、死んじまうからさ…」
 掴んだ腕を引っ張って、動けないでいた彼女を後ろから抱きしめると、

 「…――抱いてもいいよね?」

 屡薇は耳もとで、そっと確かめてきた。


 だから真依は気づくことができた、彼の心臓は同じくらいに速く脈を打っていた。

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