※※第181話:Make Love(in Landing).104








 マンションに辿り着く頃には、空の明るさはだんだんと夕闇に奪われ始めていた。
 淡く透き通り浮かんでいた月も、息を吹き込まれたかのように存在をはっきりとさせてゆく。


 落ち着いた明かりが灯るエントランスには人気はなく、

 「今日はこっちな?」
 「あっ、はいっ!」

 エレベーターは一階で待機していたが乗らずに、薔は少し強引にナナの手を引いて階段を上リ始めた。




 各階の踊り場にある窓からはぼうっとした明かりが射し込み、その空間にも落ち着いた明かりが灯されている。
 すれ違う人もなく、ふたりの話し声や足音は階段へと響いていった。


 そして15階手前の、踊り場に足を踏み入れたとたん、

 グイッ――――…

 「え…っ?」

 いきなり手を強く引かれたナナは、隅へと連れて行かれ壁に背中を押し当てられ、くちびるを奪われてしまったのだ。




 「ん…っ、ふ…っ、」
 ふたりぶんの鞄が滑るように床へと落とされ、ナナは両の手首を掴まれる。

 手の甲は壁へと当てられ、手のひらは重なり、そのままゆびを絡められた。

 …ッ…くちゅっ…

 同時に、舌も絡められてゆく。



 「んう…っ、」
 堪らずに甘い声を漏らせば、階段へと響き。
 ドキッとしたナナは感じながらも、声を抑えようと必死になる。


 外からは死角となっているけれど、隣に窓がついていることは堪らなくスリリングで。
 いつだれが通るともわからないこの場所で、

 「……っ、ん…っ、」

 ナナは躰を内側から熱く溶かされてゆく。



 やわらかく絡める舌と舌も、いやらしい音を響かせていた。

 ゆびから離れたゆびは制服越しに腕を滑り、気持ちよさのあまりバランスを失いそうな腰を抱きしめられる。


 「ん…っ、ん……」
 ナナも懸命に、彼へとしがみついて、

 「は……あっ、」

 くちびるが離されてゆくと、唾液は糸となって混ざる吐息のなかで煌めいた。






 刹那に視線を絡めたあと、濡れたくちびるを包み込むようにして吸われてしまい。

 「……っん、」

 ふるえるナナのスカートのなか、パンツは早くもびっしょりとなっていた。

[ 262/537 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る