※※第181話:Make Love(in Landing).104








 まだ広がる蒼い空も、さりげなく一緒に歩きながら。

 「羚亜くん、ごめんね?」
 帰り道、歩きながら珍しく、愛羅はしゅんとしていた。

 「え?」
 ドキッとした羚亜は、思わず歩く速度を緩め、

 「可愛いって言われるの、そんなに嫌だったかなあ?」

 愛羅は少し俯いて、尋ねてきたのだ。




 「えっと、あの、そうじゃなくて…」
 気まずそうに、羚亜も少し俯くと、

 「俺…、男なのになんか、頼りないなって、思っただけで…」

 照れくさそうに告げていた。

 「愛羅さんに可愛いって言われるのは、じつは全然嫌じゃないよ…?」







 「それなら良かった!」
 一瞬で元気になった愛羅は、彼の手を引いて歩き出し、

 「でも羚亜くんて、いざとなったらヴァンパイアだからすごく強いんじゃないの?」
 「あ、そっか。」

 今ごろ気づいた事実にふたりして笑いあったりした。


 「そうだ、愛羅さん、俺お菓子持ってきたんだけど食べる?」
 「何でこんなにいっぱい持ってきてるの?」
 「そっ、それは、何となく…」
 そして、羚亜の鞄を膨らませていたものの正体は、大量のお菓子のようであった。
 修行という名目で昨日の羚亜がしたことは、花子と豆の前でお菓子を食べながら愚痴をこぼしただけなのである。


 ふたりして今は、甘いものを食べながらゆっくり歩いて帰りたい気分だったため真っ先にポッキーの封を開けた。
 風に乗ってふんわりとチョコレートの匂いがやってくる。

 「そういえば俺、何か忘れている気がするんだよね…」
 まずは彼女のほうへ箱を傾け、ポッキーを差し出した羚亜は呟き、

 「大丈夫!忘れてるくらいだから大したことじゃないよ!」
 「それもそうだね…」

 一本を取ると今度は、愛羅が箱を受け取り彼へと差し出したのだった。














 ――――――――…

 (俺、何かしたっけ?)
 真依からLINEで、非常に質素なメッセージを送られた屡薇は困惑していた。

 “今夜会いたいんだけど”

 それだけ。
 いつもなら、スタンプか、顔文字かエクスクラメーションマークのどれかは付属しているのだが。


 (これだけじゃ表情読めねぇなぁ…)
 怒っているのか誘っているのか見当がつかず、困ったように頭をかいた屡薇はスマホ(iPhone)の画面を凝視して呟いた。

 「……でもやっぱ、誘ってんのかな?」






 性格上か、自分に都合よく楽観的に捉えた屡薇はゆびを素早く動かし、会える時間帯をきちんとメッセージで送信したのであった。

[ 260/537 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る