※※第181話:Make Love(in Landing).104
彼女の剣幕にポカンの羚亜は、そうか俺は肉食系女子が好きだったのか、と目から鱗が落ちるようであった。
同時に、修行を申し込むのならまず彼女に申し込むべきだったとも思っていた。
なかなかなその男の子は尚も、食い下がろうと体勢を整えた瞬間、
「モモちゃんかっこいいですよ!」
「攻められたいくらいぃぃ。」
端から愛羅に向かって熱い拍手が送られたのである。
気づくと立派なギャラリーができていた。
拍手を送っているナナもこけしちゃんも、こけしちゃんはいつもだが、にこにこで、ギャラリーにはなぜかバッチリ2カップルが揃っておりました。
「やだ、照れるっ!」
愛羅は近所のおばちゃまみたいな仕草で、照れている。
そんでもって、
じっ…
(うっ…!)
なかなかなその男の子は、言わずもがなあきらかに遥かにレベルが上のふたりに見据えられ、まるで蛇に睨まれた蛙のようになった。
「私の眼鏡が確かなら、羚亜のほうが断然イケメンだと思うのだが…」
「まぁ、こういうのが前衛的なんじゃねぇのか?」
羚亜のために一肌脱ぎ久しぶりにタッグでも組んでいるのであろうか、薔と醐留権は腑に落ちない様子でなかなかくんを眺めていた。
「前衛的なイケメンか……それなら私にはよくわからないな。」
「俺にだってよくわかんねぇよ、」
ふるふるふるふるっ…
羚亜と愛羅は必死で笑いを堪え、こけしちゃんは必死で悶え死にを堪えている。
たまたま通りかかった生徒たちは、ふたり並んだ姿に眼福。
ここで、
「わたし、いけめんってもんのすごくかっこいいひとのことだと思ってたんですが…、違うんですかね?」
ナナが素直にさりげなく、追い討ちをかけた。
「おい、あんま見てんじゃねぇよ、行くぞ?」
「すみません…、わたし、いけめんて辞書で引いてみます……」
不機嫌になった薔とだんだん腑に落ちなくなってきたナナは、寄り添って部室へと戻っていきました。
「おまえはよくやった。」
「えっ?そうなんですか?えへへっ…」
歩きながら頭を撫でられ、なぜ褒められているのかはよくわからないままナナは嬉しそうに照れていた。
畏縮するなかなかくんは、もういっそ逃亡したい衝動に駆られ、
「うんぅ、イケメンだって聞いたから期待してたんだけどぉ、攻めでも受けでも萌えないかなぁ、却下ぁぁ。」
おっとりニコニコと、こけしちゃんがとどめをさしたのだった。
「あぁぁぁぁ、それよりぃ、今こそスケブを持ってくるべきだったぁぁぁ……」
楽園が見えているこけしちゃんは、お腹いっぱいだがおかわりしたい気分で部室へと戻ってゆき、
「ところで俺って草食系なの?」
「羚亜くんは可愛い系!」
「なにそれ?」
結局、帰り道の波乱など物ともせずバカップルは手を繋いで一緒に帰っていきましたとさ。
ヒュ――――…
名前すら明かされることのなかったなかなかくんには、春なのに木枯らしが吹いた。
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