※※第181話:Make Love(in Landing).104








 「よくよく考えたらiPod持ってきても、笑っちゃうんだよな…」
 自宅まで取りに戻ったはずの部長さんは、未だ校門に辿り着いてさえいなかった。
 この際、誰かに貸してもらおうかとも考え始めている。


 「おっ、思い出したら…微笑ましくて、笑いがっ……ふははっ……」
 そして、校門の辺りで我慢できず思い出し笑いをしてしまうと、

 「しつこいっ!」

 ひどく怒ったような、クラスメートの声が聞こえてきたのだ。
 ここにきて明かしますが、愛羅と和湖部長はクラス替えで同じクラスになったようです。


 思い出し笑いはぴたりと止み、和湖部長が顔を上げると、

 「やだっ!離して!」
 愛羅は今まさに、他校の男子生徒に無理矢理連れて行かれようとしていた。



 (微笑ましくないもの嫌い!彼氏に知らせてあげよう!)
 きびすを返した和湖部長は、二年の教室に向かって走り出したのだが、

 「でも、一緒に帰ってないってことは先に帰ったのかな?」

 ふと、走る速度を緩めると、

 「……み、三咲さんに、知らせればいいかな?仲良しだし…、あっ、あと、職員室にも……」

 向かう方角を変えまずは部室へ向かって走り始めた。
 ナナに知らせれば薔もついて来てくれるだろうという魂胆は、もちろんございます。














 「あたしに近づいて、最終的には羚亜くんに近づきたいんでしょ!?」
 愛羅は憤慨して、なかなかなその男の子の魔の手を振り払っていた。

 「そうじゃなくて、おれは君に近づきたいんだよ…」
 なかなかくんは、先にお伝えした通りの自覚があるためなかなか強引に迫ってくる。

 両者、一歩も譲りません。



 彼氏と一緒には帰れない上に、しつこい他校の男子に迫られて愛羅にとってはまさに踏んだり蹴ったりだった。

 とも、思われたのだが。



 「愛羅さん!?大丈夫!?」
 学校からそのまま薔のマンションへ向かう予定だった羚亜が、運よく通りかかったのである。
 どうやら、鞄がいつもより膨れているため、帰りの身支度にいささか手間取っていたようだ。



 「羚亜くん!」
 愛羅の瞳は、羚亜の姿を目にしたとたんに輝き始め、

 「ねぇ、そんな奴やめて、おれと付き合わない?」

 特技はおそらく空気が読めないことであろうななかなかくんは、自信たっぷりに愛羅の肩を掴んだ。




 「このばかたれが!」

 ぐいっ!

 「うわっ!」

 掴まれた肩を力の限りに前へと引いて、なかなかなその男の子のバランスを思い切り崩させると、

 「空気を読みなさい!強引さだって、中途半端だし全然ときめかないわ!何を目指してるのか知らないけど、世の中すべての女の子が肉食系男子を好きだと思うなよ!?」

 愛羅は男の子に向かって、毅然と言い放った。

 「それから残念でした!羚亜くんは肉食系“女子”が好きなんだから!」






 自覚はあったのか、肉食系の。

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